日本の近代化を映す 駅弁と一緒に販売され - 「発掘された日本列島2022」展
◆ 新発見考古速報
汽車土瓶(きしゃどびん)
史跡旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡(東京都港区)
近代
駅弁と一緒に販売されたお茶の容器。高さ約8センチ、注ぎ口を含んだ最大径12センチ。蒸気機関車の絵が描かれ、煙を噴き上げるその軽やかな姿から汽笛の音も聞こえてきそうだ。
旧新橋停車場跡と高輪築堤跡は、1872(明治5)年に新橋―横浜間で開業した日本初の鉄道の遺構。高輪築堤跡は線路を通すために海上に築かれた堤で、発掘調査では石垣を積んだ橋台も見つかった。橋を渡る汽車の姿は当時の錦絵「東京品川海辺蒸気車鉄道之真景」(三代歌川広重)にも描かれている。
遺構は日本の交通の近代化や土木技術の歴史を知る上で重要な発見となり、「保存か開発か」の議論に発展、一部が保存された。県内でも2021年に奈良市の菅原遺跡で、奈良時代では類例がない円形の建物跡が見つかり、現地保存が模索されたがかなわなかった。今回の展示は遺跡の保存についても考える機会となりそうだ。