【特集】展覧会ここが見どころ<1> - 橿原考古学研究所付属博物館春季特別展「八雲立つ出雲の至宝」

奈良県立橿原考古学研究所付属博物館で春季特別展「八雲立つ出雲の至宝」が開かれている。施設の大規模改修に伴う長期休館を経て、2021年11月にリニューアルオープンしたことを記念して開催。奈良と歴史的に関係の深い島根県出土の考古資料がずらり並ぶ。担当者の北井利幸指導研究員にお勧めの展示品を解説してもらった。
―特別展の特徴は
発掘調査で出土した島根県の豊富な考古資料を一堂に集めています。島根県外ではあまりお目にかかることのない資料も多くお借りしました。何かしら大和(奈良)や近畿地方との関わりのあるものを中心に展示していますので、当館の常設展示室に並ぶ奈良県出土品と併せてご観覧ください。
―イチ推しの展示品は
平所遺跡(松江市)出土の埴輪(はにわ)「見返りの鹿」(国重要文化財、6世紀)は、形象埴輪の出土が少ない出雲で最も有名な埴輪です。同遺跡は埴輪の窯跡で、なぜこの埴輪が古墳に運ばれず捨てられたのかは分っていません。
脚部の大部分を失っていますが頭部は良く残り、愛らしい顔の表情が人気です。角があることからオス鹿だと考えられます。目の周りには赤色顔料が塗布されています。会場では360度、いろいろな角度から観覧を楽しめますが、実は鼻の位置はゆがんでいます。観覧の際は顔の正面からではなく、向かって少し右側から見るのが私のお勧めです。

見返りの鹿は全国で3点見つかっています。そのうちのもう1点は、奈良県橿原市の四条遺跡出土品で、当館で常設展示しています。角がなくメス鹿ともいわれているものです。体の大きさや顔の表情、振り向き具合など、出雲と大和の「見返りの鹿」を見比べてみてください。
ちなみに会場に並ぶ平所遺跡出土の埴輪「飾り馬」(国重文)も来館者に人気のある展示です。
―青銅器がずらり並んでいます
出雲といえば銅鐸(どうたく)や銅剣、銅矛の青銅器が有名です。加茂岩倉遺跡(紀元前2~前1世紀、雲南市)では国内最多39点の銅鐸(国宝)が見つかりました。絵画銅鐸には顔や鹿などの図像が描かれています。
第17号銅鐸(四区袈裟襷文=けさだすきもん=銅鐸)は、奈良県上牧町出土銅鐸と同じ鋳型で作られたものです。出雲と大和で同じ時代に同じ青銅器を手に入れたいたことが分かります。

私が銅鐸を観察していてひかれるのは、側面から見たときの舞部(身の上面)から裾部にかけてのラインです。舞部から裾部までが直線的なもの、身部下半から裾部にかけて広がるもの、やや内側に弧を描くものなど、さまざまな姿をしています。