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【動画あり】糞虫に魅せられて Episode1 糞虫に人生を捧げた人

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 「糞(ふん)虫の博物館!?誰がお金払ってわざわざウンコに来る虫を見に来るんだというのが、ほとんどの人の反応でした」と語るのは、人呼んで「フン虫王子」こと「ならまち糞虫館」館長の中村圭一さん(60歳)だ。

 

 知る人ぞ知る、日本初の糞虫博物館「ならまち糞虫館」は奈良市の旧市街地、通称「ならまち」にある。通りから少し奥まったところに、こっそり隠れるように建っているところがいかにも糞虫らしい。

 

フン虫王子こと中村圭一館長

フン虫王子こと中村圭一館長

 

「糞虫」鞘翅目(しょうしもく)コガネムシ科の昆虫のうち、哺乳類の糞を食物とするグループの総称。
(出典:ブリタニカ国際大百科事典)

 

 

糞虫との出会い

 子供の頃から昆虫が大好きで、中学2年生の時に同じクラスの子が糞虫好きで、その子に影響されて奈良公園に通い出した。奈良公園には多くの鹿がいるため、日本有数の「糞虫の聖地」だとも言われている。昆虫同好会を学校で立ち上げ、どんな食べ物が好きなのか、どういう生態をしているのか、当時糞虫なんて調べている人はほとんどいなかったため、全てが新鮮でのめり込んでいった。

 

 

日本初 糞虫博物館!?

 そんな糞虫少年も社会に出て、サラリーマンとなって東京で単身赴任が10年以上も続いていた頃、会社で受けたライフプラン研修が第二の人生を考えるきっかけとなった。東京にはあまり生き物はいないし、昆虫が好きだし、奈良に戻って昆虫を展示したりできるような施設を作ろうと。こうして中村さん54歳の時、私財を投じて、2018年に奈良公園の近くに「ならまち糞虫館」をオープンさせた。

 

 白を基調とした博物館はまるでデパートの化粧品売り場のよう。そこに糞虫が可愛らしくディスプレイされている。キラキラした光沢のあるものや、ツノがあるもの、国内外その数、約500種類が展示されている。

 

日本初!糞虫博物館 ならまち糞虫館

 

 

自然界の掃除屋

 糞虫は奈良公園に落ちている大量の鹿の糞にやってきて、糞の中でごそごそ動いて繊維をほぐす。ふわふわになって乾いた糞は、バラバラと芝の間に入り、微生物が分解し芝生の栄養分となり、その芝をまた鹿が食べる。糞虫は自然界のサイクルを回すひとつの重要な役割を果たしている。また、糞に集まるハエの卵や幼虫を食べるため、あれだけたくさんの糞が落ちていてもハエが少ないのは糞虫のおかげだと中村さんは言う。

 

 畜産大国オーストラリアでは家畜の糞に集まるハエが糞公害と呼ばれるほど大きな社会問題となり、その結果海外から糞虫を持ち込んだという歴史がある。あれほど動植物の輸入に関して厳しい国が、国外から糞虫を導入したというのは驚きだ。糞虫はまさに小さなヒーローなのだ。

 

 

糞虫教室と未来への想い

 中村さんは毎月奈良公園およびその周辺で糞虫教室を開いている。子供たちに、「昆虫をとおして自然に関心を持ってほしい。いろんな生き物がいてバランスが成り立っている、自然界の仕組みの面白さや、人間もその中の一部でしかないということを知ってほしい。」と話す。

 

 個人的な趣味で始めた「糞虫館」だが、「僕がいなくなったら糞虫館も無くなりましたというのは、もったいない。無くすのがもったいないと思うようになった」と話してくれた。中村さんの活動は多くのメディアにも取り上げられているものの、どうすれば次の世代へと繋いでいくことができるか模索中だ。

 

春日山の麓で糞虫採集

春日山の麓で糞虫採集

 

 

取材を終えて

 糞虫を研究しているなんて、変わった人だと思っていたのだが、昆虫好きの少年がそのまま大人になったというだけで、昔は同じように虫が大好きだったはずなのに、変わってしまったのは私たちの方かもしれない。糞虫を追い続け、自然の大切さを伝える中村さんの取り組みは、未来を担う子供たちだけでなく、私たち大人にとっても大切な気づきがあった。

 

 もし街で放置された糞を見て、ひっくり返したい衝動に駆られたら、あなたは次のフン虫王子の資格があるかも。

 

 

 

 

ならまち糞虫館

奈良市南城戸町28-13

【営業時間】土曜日:13:00〜18:00 日曜日:13:00〜18:00

https://www.hunchukan.jp

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