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逢香の華やぐ大和 甘樫丘・牽牛子塚古墳(奈良県明日香村)

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歴史ロマンを体感

日本の原風景広がる地

日本の原風景が広がる明日香村に到着した逢香さん

 

 書家の逢香さんが県内の社寺や名所を訪ね、地域の魅力を発信する「逢香の華やぐ大和」。今回は雨の降る秋の明日香村へ。古代の歴史ロマンや原風景の広がる村の自然を体感しました。(岡崎雅樹)

 

 

紅葉したコキアの畑

 古くは日本書紀などにも記述があり、7世紀前期には当時の有力者であった蘇我蝦夷(そがのえみし)・入鹿(いるか)親子が権勢を天下に示すために大邸宅を築いていたとされる甘樫丘。麓に到着した逢香さんは、川原駐車場の南に広がるコキア畑に向かった。

 

 一年草のコキアの和名は「ホウキグサ」。昔、乾燥した枝をホウキとして利用していたことに由来するそうで、夏に鮮やかな緑色だった葉が秋には赤く紅葉する。

 

 コキアの赤く丸みを帯びたシルエットを見た逢香さんは「一度見たら忘れられない。目玉を付けたら生き物っぽく見えるな」と気に入った様子。約1500株が整然と並ぶ姿に「一つ一つが大きく、真っ赤で圧巻。明日香の原風景に日本らしくない植物で、この世界観は面白くておしゃれだな」と感心すると、「華やぐわ~」とひと言。

 

赤く色づくコキアに「華やぐわ~」

 

 

万葉の植物園路でクイズに挑戦

 甘樫丘には約2キロの「万葉の植物園路」があり、万葉集、古事記、日本書紀に記された40種類の植物を観察しながら散策できる。万葉植物の前にはプレートが設置され、その植物が登場する歌やヒントなどをクイズ形式で紹介、歩きながら自然と知識が深まる。

 

万葉の植物名クイズに挑戦

 

 当然、逢香さんもクイズにチャレンジ。プレートには「…是(ここ)に其(そ)の妻 牟久の木の實(み)と赤土(はに)とを取りて、其の夫(ひこぢ)に授けつ…(古事記上巻)」などのヒントが。必死に悩んだ逢香さんが「ムクノキ」と答えると、見事正解。難問クイズ4問に挑戦したものの、これが唯一の正解となり、「一問くらいは当てたかったので良かった。古事記の頃からずっとある植物なんですね」と感慨深そうに木を見上げた。園路には39問の万葉植物クイズが点在している。

 

 

いよいよ甘樫丘展望台へ

 標高148メートルの頂上に到着した逢香さんは「360度見渡せる」と大喜び。展望台から一望できる畝傍山、耳成山、香具山の大和三山を指で示しながら言い当て、「奈良好きとしては答えられないと」。東側に移動して明日香村内を眺めながら、「田んぼが広がり、赤いヒガンバナもちらほら見えて『ザ・明日香』という景色ですね。何度も行かせてもらった飛鳥寺が真正面に見えます。雨ということもあって(山の)雲のかかり方とか湿気の感じも明日香らしいなと思う」としみじみ。晴天では味わえない村の魅力を感じたようだ。

 

明日香村の原風景が眼下に広がる甘樫丘展望台

 

 

斉明天皇母子が被葬者とされる牽牛子塚古墳

 明日香村はオリジナル御朱印「飛鳥乃余韻」を販売、8カ所の古墳や遺跡の特徴を表現した文字は、なんと逢香さんが揮毫(きごう)! 今回はその一つ、牽牛子塚(けんごしづか)古墳にやってきた。古くから「あさがお塚」と呼ばれていたことから、アサガオの種子を意味する「牽牛子」と名付けられた。案内は今年3月に誕生した「飛鳥地域プロガイド」の岡本直子さん。

 

牽牛子塚古墳の前で「飛鳥乃余韻」をPR

 

飛鳥地域プロガイドの岡本さん(右)から牽牛子塚古墳の石槨前で話を聞く

 

 古墳の前で岡本さんから珍しい八角形の牽牛子塚古墳には斉明天皇と娘の間人皇女(はしひとのひめひこ)が眠っていたとされると説明を受け、2人は古墳内の石槨(せっかく=棺を納める石造りの部屋)へ。岡本さんが材料となった石の種類や特徴、石槨の造り方などについて説明すると、逢香さんは「当時の最新技術を詰め込んだゴージャスでおしゃれな感じ。ここに母娘で入るというのも珍しいですね」。岡本さんも「温もりがあるように感じられる。きれいな形に仕上げていて見るたびに感動させられます」と感想。古代に思いをはせる貴重な時間となった。

 

石槨内をのぞく岡本さん(右)と逢香さん

 

 牽牛子塚古墳の石槨は柵・扉の外からの見学は無料。内部の特別公開は有料(500円)で、事前予約が必要。

 

 

逢香の目

明日香村役場内で筆を取った逢香さん。作品名はNHKの放送番組にちなんだ「ファミリーヒストリー」

 

 「ホウキグサ」といわれるコキアからホウキ、もうすぐハロウィンということで逢香さんが描いたのは魔女。その下の紫色は牽牛子塚古墳のアサガオをイメージした。

 

 文字は「家族 飛鳥」。甘樫丘は蘇我氏、牽牛子塚古墳は斉明天皇の両ファミリーの歴史を学べたということで、「飛」と「鳥」の間に「ス」を入れて「ファミリー(家族)ヒ(飛)ストリー(鳥)」と読む。

 

 

メモ

◆国営飛鳥歴史公園甘樫丘地区川原駐車場

 明日香村川原

 駐車台数/普通29台・身障者用2台

 駐車料金/無料

 甘樫丘展望台へは、バス停「甘樫丘」から 徒歩約15分

 

◆国史跡・牽牛子塚古墳

 明日香村越

 近鉄吉野線飛鳥駅から徒歩約15分、自転車 約5分。

 現地に駐車場、トイレはなく、同駅かアグリステーション飛鳥(明日香村真弓1042)の駐車場、トイレを利用する。両駐車場から現地まで徒歩約15分。駐輪場あり

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使、(一社)モノモン代表。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内できょう2024年10月8日に放送されます。

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