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逢香の華やぐ大和 橿原神宮(奈良県橿原市)

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橿原神宮(奈良県橿原市)を訪ねて

境内彩る四季の風情

 書家の逢香さんが県内の神社仏閣などを巡り、季節の花や土地の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は橿原市の橿原神宮です。

 

橿原神宮の外拝殿=写真はいずれも6日、橿原市久米町

 

橿原神宮の参道へ

 初代天皇、神武天皇が即位した地として明治時代に創建された橿原神宮。「この広さ、来るたびに圧倒されます!」。逢香さんは広大な敷地を見渡した。

 

橿原神宮の第一鳥居 

 

 ヒノキの質感を生かした素木(しらき)造りの鳥居前で一礼し、表参道へ。砂利を踏みしめる音が、澄んだ空気に響く。神門を抜けると視界が開け、畝傍山の紅葉を背に建つ外拝殿が現れた。整えられた白砂利の前庭と青空が対比し、格別の美しさだ。

 

大絵馬に祈願

 外拝殿でお参りを済ませ、来年のえとが描かれた大絵馬に逢香さんは歩みを止めた。「ウサギさん、勇ましいお顔をされていますね…」。


 原画の作者は橿原市在住の日本画家、藤本静宏さん(67)。ウサギの躍動感を表現しようと、宇陀市の「うだ・アニマルパーク」を訪れるなどして研究したという。「コロナ禍を吹き飛ばし、明るい年を迎えられるように」とウサギの強いまなざしに願いを込める。

 

来年のえと、ウサギが描かれた大絵馬

 

境内を散策

 境内には西参道沿いの神饌田(しんせんでん)や深田池、北参道沿いの森林遊苑や畝傍山登山口などの見どころが多い。スケッチする学生や散歩する人たちが四季の風情を感じながら過ごし、逢香さんも境内を散策した。

 

▽サザンカ

外拝殿脇に咲くサザンカ


 外拝殿の脇で咲くサザンカを発見した逢香さん。「小ぶりでかわゆい! 華やぐわ~…」。ツバキとよく似ているが、見分け方がある。「花首から落ちるのがツバキで、花びらが散るのがサザンカだそうです」。逢香さんは、本コーナーで今年2月に訪れた椿寿庵(ちんじゅあん、大和郡山市)から聞いた豆知識を紹介した。

 

▽フユザクラ

フユザクラと紅葉の共演


 野鳥が多く飛来する深田池の北側には、フユザクラが小さな花を咲かせている。傍でモミジも色づき、春と秋が同時に来たような光景だ。「なんだか不思議で面白い。華やぐわ~…」。モミジとサクラの共演は12月末まで。春はサクラ、初夏はツツジが散策コースを彩る。

 

▽長山稲荷社

朱の鳥居が並ぶ長山稲荷社


 「橿原神宮はすごく広いので、行ったことがない場所がたくさん」と逢香さん。長山稲荷社は橿原神宮が鎮座する以前から長山の地主神として祭られ、神宮を造営の時から見守り続ける。社に向かい朱塗りの鳥居が幾重にも並び、先へ進むほどに静謐(ひつ)さを増した。

 

神の使い ヤタガラス

 橿原神宮のマスコットキャラクターにもなっている、3本足のヤタガラス。日本書紀や古事記で神の使いとして登場し、神武天皇を奈良の地に導いたとされる。

 

橿原神宮のマスコットキャラクター、ヤタガラスの「やたちゃん」(左)と「カーコちゃん」


 2018年、逢香さんはヤタガラスを水墨画で描き、掛け軸の作品を同宮に奉納。「躍動感ある羽ばたきを墨でよく描かれている」と本塚順二・祭儀次長(58)。逢香さんは「神々しさを墨で表現するため何枚も描き直した」と振り返る。今夏、奈良市美術館の個展で同作を展示し、人気投票で1位だったという。

 

逢香さんが奉納したヤタガラスの水墨画

 

境内で味わうスイーツ

 橿原神宮のCafe橿乃杜(かしのもり)は、今年7月オープン。杜の緑になじむガラス張りの外観で、季節限定のモンブランパフェ900円(12月末まで)の他、定番のビーフカレー800円、コーヒー300円~(全て税込み)も人気だ。

 

境内のカフェでパフェをいただいた


 「境内でパフェが食べられるって嬉しい!」。逢香さんは、素朴な甘みの栗ペースト▽バニラアイス▽スポンジ―の調和を堪能し、思わず笑顔に。橿原神宮の多彩な魅力に触れ、心華やぐ1日となった。

 

宝物館

 宝物館は2000年、橿原神宮の御鎮座110年を記念して開館。橿原神宮の創建以来、祭神にゆかりの深い鏡や刀剣、絵画を展示し、橿原神宮の歴史と文化を紹介している。


 神武天皇の肖像画▽神武天皇が九州の高千穂から大和の国を目指した物語の絵巻物▽創建当時に明治天皇から奉納を受けた太刀▽横山大観作の「正気放光」▽18年当時の天皇后両陛下から賜った銅鏡「橿原の杜」―などを所蔵、展示する。

 

銅鏡「橿原の杜」

 

逢香の目

 

境内での出会いを表現した遭香さんの作品

 

 サザンカ、フユザクラ、モミジ、ヤタガラス―。日本画の「たらし込み」の技法を用い、橿原神宮で発見した草花などを描いた。紙の上で淡色の顔彩が混ざり合い、紙面を優しく彩った。

 

 逢香さんは中央に「縁神」と揮毫(きごう)。「橿原神宮は祖父と自分自身にとっても深いご縁を感じる」と説明し、この文字を選んだ。

 

 2字の読みは「エンジン」。それと掛けて「来年も華やぐ大和の撮影チームでエンジン全開で頑張りたい」と意気込んだ。

 

メモ

◆書家/逢香(おうか)
 奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学で変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち「妖怪書家」としても活動。

 

◆橿原神宮
  橿原市久米町934。近鉄橿原神宮前駅から徒歩12分もしくは近鉄橿原神宮西口駅から徒歩10分。駐車場あり。開門時間は午前6時30分~午後5時。祈祷など受付は午前9時~午後4時。入場無料。電話0744(22)3271。

 

◆Cefe橿乃杜(かしのもり)
 橿原神宮崇敬会館内。午前10時30分~午後4時30分(ラストオーダー)。電話0744(26)2789。

 

◆宝物館
 橿原神宮崇敬会館内。土日祝休日のみ開館。午前9時~午後4時。平日は要予約。12月末まで展示替えのため休館し、1月1日から再開。入館料は大人300円、中高大学生200円、小学生以下無料。


 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で12日に放送されます。

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