「あの子、ごんたやなあ」。やんちゃな子…
「あの子、ごんたやなあ」。やんちゃな子どもを意味する「ごんた」。文楽、歌舞伎の「義経千本桜」に登場する「いがみの権太」に由来するという。
下市のすし屋の息子が権太。数々の悪さをして親から勘当されているが、本心は義理と人情に篤く、千本桜の数多くの登場人物の中で最も生彩を放っているのではないか。
人気者は「ごんたくん」として下市町のマスコットキャラクターになっている。また、舞台となった日本最古のすし屋とされる「つるべすし弥助」は著名人も訪れている名店だ。
奈良ゆかりの古典文学なので、このほど初めて通読してみた(いしいしんじ訳、河出文庫)。作家による新訳は、方言も交じえた生き生きとした表現で読みやすい。
「義経千本桜」との題名なのだが、義経はおそろしく影が薄いし、桜はほとんど出てこないのが意外であった。格調高い古典というより、江戸時代の奇想天外なエンタ―テインメントなのだ。
一日がかりの通し狂言として30日まで国立文楽劇場(大阪)で同作が上演されている。舞台上の権太らに会えるのを楽しみにしている。(栄)