金曜時評

衆院選与党敗北 政治不信解消急げ - 編集委員 高瀬 法義

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 今年最大の政治決戦である衆院選は15年ぶりとなる与党の過半数割れに終わった。県内の自民党は2、3区で前職が盤石の勝利。1区も前職が前回同様、立憲民主党の前職に敗れたものの比例復活当選を果たした。しかし、比例の得票総数に占める割合を示した得票率は、25.1%で3年前の前回(30.6%)と比べ5.5ポイント減。自民と連立を組む公明党も10.1%で前回(11.79%)より1.69ポイント下げている。

 

 最大の要因は、「政治とカネ」の問題だろう。投票前に行った奈良新聞の電話世論調査でも、今回の衆院選の争点を聞く質問で4割の人が「政治とカネ」と答え、「経済対策」(56.2%)に次いで多かった。また、投票日(10月27日)に共同通信社が実施した投票所での出口調査によると、県内では、投票の際に自民党派閥裏金問題を「考慮した」と答えた人が73%で「考慮しなかった」(24.4%)を大きく上回った。自民支持層でも64.9%が考慮し、政治とカネの問題が有権者の投票行動に大きな影響を与えたことは間違いない。

 

 さらに、同調査では県内で支持政党を「自民」と答えた人のうち、比例で自民に投票した人は7割弱にとどまり、7・7%が日本維新の会、6%が立民にそれぞれ投票した。自民を支持するが、裏金問題などに対する不信から今回は他党に投票した人が一定数いたことがうかがえる。自民に「お灸を据える」という意味もあったのかもしれない。

 

 一方、県内比例得票率で野党は立民が17.33%で3.39ポイント、国民民主党が8.39%で4.92ポイントそれぞれ前回比で増やした。しかし、維新は18.97%で県内の「野党第1党」を保ったが前回より9.1ポイント下げた。共産党も6.25%(前回比0.77ポイント減)と伸び悩んだ。

 

 また、県内の投票率は58.49%で前回を0.64ポイント下回り、2014年に55.60%(小選挙区)と戦後最低を記録してから4回連続で60%を割り込んだ。投票率低下にはさまざまな要因が考えられるが、繰り返される政治とカネの問題で有権者に政治不信が広がったことも、その一つに挙げられる。

 

 衆院選の結果は、同問題に対する有権者の意思の表れだ。国会が問題解決に向けて真剣に取り組まなければ、「投票しても何も変わらない」と有権者の政治不信はますます深まるだろう。政治不信の解消は急務であり、与党はもちろん、大幅に議席を増やした野党にとっても大きな課題だ。

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