先日の本欄が与謝野晶子に触れていた。大…
先日の本欄が与謝野晶子に触れていた。大河ドラマ『光る君へ』を見ていて、かつて通読に挫折した『源氏物語』への再挑戦を思った矢先だった。
原文で読むことは早くから放棄していた。現代語訳なら読み通せるのではと手にしたのが、晶子の『全訳 源氏物語』(全3巻、角川文庫)だった。
結局、途中で投げ出した。40年ほど昔のことだ。晶子は、今で言う小学校高学年の頃には『源氏物語』を原文で読んでいたらしい。そんな時代もあったのだ。
今では現代語訳本はいくつもある。晶子訳はいわゆる意訳であり、正確さという点でもかなり問題があるという。これを薦める人はあまりいないかもしれない。
大河ドラマ『光る君へ』は藤原道長の時代を描く。平安期の宮廷社会が、難しい現代の状況を考える参考になるのでは、という思いもさせて興味深く見ている。
紫式部と与謝野晶子という女流文学者。時代は違えど、それぞれに社会状況を深くとらえていた。そういえば、現在も女性作家はとても元気だ。日露戦争に出くわした晶子は「君死にたまふことなかれ」と詠んでいた。 (北)