言葉は時に一人歩きする。有名な志賀直哉…
言葉は時に一人歩きする。有名な志賀直哉の「奈良にうまいものなし」もそうだ。随筆「奈良」に書かれた「食い物はうまい物のない所だ」との何げない一文だが、今では「呪いの言葉」のようになった。
当時はそれに同意する人が多かったのだろう。しかし、昭和初めから時がたち奈良の食も変わった。
先日、奈良の料理人4人が作った「究極の松花堂弁当」を山下真知事が味わった(4日付既報)。山下知事も満足した様子で、料理人を推薦した岡本彰夫県立大学客員教授は「奈良の食は確実にレベルアップしている」と胸を張る。
企画に協力したホテル「尾花」(奈良市)の中野聖子社長も「最近は良い店が増え、お客さまに紹介する店に迷う」と充実ぶりを認める。雑誌などでも奈良の店が取り上げられることも多くなった。
究極の松花堂弁当を作った料理人たちが口をそろえるのは、奈良の食材の良さ。「奈良のうまいもの」は、優秀な食材と料理人たちに支えられている。
ただ、全国的にはまだ周知されていない。志賀の呪縛を解くためには、奈良の食を広める努力が必要だ。(法)