「ガソリンの代用にするため戦中に松やに…
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「ガソリンの代用にするため戦中に松やにを採ったマツはどこでしょう」。先日、編集部にそんな電話がかかってきた。奈良新聞社が昭和56年に発行した郷土読本「わたくしたちの奈良県」に写真があるという。
書庫から当該の本を引っ張り出して調べてみた。「戦争中のくらし」を扱った章に、2本の傷跡が生々しく残るマツの写真が掲載されていた。
説明に奈良国立博物館北側の歩道とあり、現地を訪ねたが見つけられなかったという。害虫や台風被害で伐採されたのではないかと電話の男性は残念そうだった。
特攻学徒兵の苦悩を書いた阿川弘之さんの小説「雲の墓標」に、代用燃料を使用した練習機でエンジントラブルが多発、命を落とす訓練兵が出るくだりがある。
マツの木を使った油は松根油と呼ばれ、明治時代ごろから国内でも造られたようだが、戦中に航空燃料としての活用が模索された。政府は国を挙げて採取を奨励した。
奈良公園のマツからどれだけの松やにが採れたか分からないが、県内でも懸命に協力しようとした人がいたことを、一本の電話に教えられた。(増)