半世紀も前、専業主婦だったわが母が内職…
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半世紀も前、専業主婦だったわが母が内職に精を出していた時期がある。理由は聞かなかったが、家計の助けにするためだったのだろう。ただ、かなりの数を仕上げても当時の小学生の数日分のこずかい程度の報酬なのに驚いた。何となく切なくもなった。
最近似た気持ちを抱いた。現在の内職(家内労働)の報酬が、その頃と大きく変わっていないことを知ったからだ。
聞けば、家内労働従事者は労働基準法の労働者の定義の中に入らない。それゆえ最低賃金の対象にもならないそうだ。
最低賃金に代わる最低工賃の規定があるものの、県内では靴下関連の一部作業に限られている。安く買える品の中には、家内労働従事者の作業があればこそのものがある。
家事が労働か否か、対価はいくらかなどが話題にされたのはずいぶん前のこと。家内労働に携わる理由はさまざまだろうが、出たくても家の外で働けない人の立場は以前とさほど変わらない気がする。
家内労働の中には廉価ショップの商品の袋詰め作業もあるようだ。こうした店で買い物をする時は、今では心持ち背筋が伸びる。(智)