国原譜

「ここを越えれば人間世界の悲惨、越えな…

 「ここを越えれば人間世界の悲惨、越えなければわが破滅」。ローマの軍人であり政治家でもあったカエサルは、ルビコン川を前にしてそう言ったとされる。

 当時のローマでは、指揮官であっても軍隊を率いて本土に入ることは許されず、解散するのが決まり。その境がルビコン川だった。

 カエサルは元老院を無視してガリアを転戦し、帰国の最終勧告を受けていた。ローマでの名声は高かったが、帰国すれば告発されることは目に見えていた。

 23日に開幕する東京五輪は、日本選手団の結団式が6日に東京で開かれた。各国の選手団も次々と来日しており、無観客か有観客かの議論はあるにせよ、突き進むしかない所まできた。

 東京などでは新型コロナウイルスの感染状況悪化が懸念され、目の前には衆院選。菅義偉首相にすれば、ルビコン川を渡る心境だろう。

 「賽(さい)は投げられた」と兵士とルビコン川を渡ったカエサルはローマの支配権を手にしたが、菅首相は衆院選でどのような戦いを見せるのか。五輪の成否はもちろん、1年半にわたる新型コロナ対策の中身が問われる。(増)

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