奈良市観光協会長に就任した 増尾 朗さん(49) - ときの人
「時間をかけて観光していないから、お金を使うタイミングがない。奈良市を拠点に県内の神社仏閣や史跡などを巡る企画を発信し、宿泊客を増やしたい」
奈良市発表の2023年同市訪問者の1人当たり観光消費額(平均)が日帰り客4644円で宿泊客2万9141円。うち外国人は日帰り6217円で宿泊3万94円。この数字を根拠に、観光客数ではなく「日帰り客を1人でも多く宿泊客へと転化できれば、市経済は活性化する」と意気込む。
奈良公園で鹿と触れ合い、東大寺や春日大社といった公園近くの大寺社を参詣。その後は周辺店で昼食を食べ、道中や駅周辺で土産を買って宿泊先の大阪市や京都の観光地へと向かう―。こうした訪日外国人旅行客らの計画に、新たな目的地を追加させることができれば、滞在時間が延び、宿泊客も増えると考えている。
奈良市在住。県石油商業組合理事長や関西ニュービジネス協議会副会長など約20の団体で要職を務め、今年6月に同市観光協会長に就任した。任期は2年。
観光客が求めていることについて「われわれは実際のところ何も分かっていない」とし、それを知るために「トライ・アンド・エラーを迅速かつどれだけ行えるかが成否の鍵」とみる。
主な計画として春日大社、興福寺、元興寺、唐招提寺、薬師寺を対象とした「秋の世界遺産5社寺夜間特別参拝」の継続▷平城宮跡歴史公園と、近鉄奈良駅北側に位置する東向北商店街から奈良女子大学までの一帯「通称=きたまち」のPR▷SNS(ネット交流サービス)を活用した飲食店情報の提供―などを挙げる。
自社グループでは「信用・誠実なサービス・笑顔」を心構えとして説く。「一見当たり前のことに思えるが、ぶれずに実践するには強い意思が必要で実はとても難しい」と語り、奮戦の日々を送る。(大笹久光)
ますお・あきら
1975(昭和50)年に奈良市で生まれる。米コロラド大学ボルダー校卒。外資系石油販売会社を経て、2003年に砂糖・小麦粉などの卸売やガソリン販売、自動車教習所経営などを手がける「マスオグループ」で専務として働き始め、14年に同グループ社長に就任した。読書が趣味で2週間に3冊ほど読む。目下、姉妹都市の韓国・慶州市との交流に役立てようと韓国語を勉強中。