江戸時代末期のだんじり、現代に復活へ 奈良県香芝市の下田地区住民ら 文化庁の補助金を活用し修復作業、来秋に完成予定
奈良県香芝市下田地区の「下田地車(だんじり)保存会」は、江戸時代末期につくられただんじりを現代に復活させようと、文化庁の補助金を活用し修復に乗り出した。完成は来秋の予定。今年10月には一時里帰りして、地域の秋まつりの時期に六十余年ぶりの曳行(えいこう)を目指す。
同保存会によると、下田地区は明治期中ごろ、大阪方面から中古でだんじりを譲り受け、1957(昭和32)年ごろまで毎年、秋祭りで地域を巡行。提灯を灯し、鉦(かね)や太鼓の鳴り物を乗せて練り回った。その後は長い間、鹿島神社(同市下田西1丁目)の小屋で保存されたままになり、劣化が進んでいた。
だんじりは1854(嘉永7)年、泉州・堺の彫師の一門「彫又(ほりまた)」の作。「見送り」と呼ばれる側面や後部には、源平合戦の「壇ノ浦の戦い」を主題に彫り物が施され、一の谷、屋島から壇ノ浦への平家滅亡に至る三つの場面を描く。平清盛の四男、知盛が碇(いかり)を担ぎ入水するシーンでは、碇を鉄で表現するなど、随所に技巧が凝らされている。
「由緒あるだんじりを眠らせておくのはもったいない。修復して動かしたい」
声を挙げたのは、下田だんじりを独自に研究し、同地区で歯科医師をしていた森谷泰之さん(89)だった。昨年11月、だんじり復活に向け自治会のメンバーを中心に保存会を発足。文化庁の補助金を申請し、本年度の助成が決まった。
今年秋までに土台部分などを修理。その後、装飾部分の修復に取り掛かる。
今月9日には、保存会のメンバーや修復を担う職人が鹿島神社でおはらいを受け、作業の安全を祈願。だんじりは小屋から搬出され、大阪府泉佐野市の工務店に運ばれた。
幼い頃だんじりに乗せてもらったという森田充紀・保存会長(72)は、「怖くてじき降ろしてもらった」と懐かしむ。だんじりが一時里帰りする秋に向け、「地元の人に協力をお願いし、引き回しも盛大にやりたい」と期待に胸を膨らませている。
保存会では、曳行していた下田地車の写真や動画を探している。提灯などの装飾を確認し、過去の姿を復元するため。問い合わせは、同会広報担当の森口高平さん、電話090(8574)2848。