大型精密機械加工に注力「伸和鉄工所」 - 奈良の自慢企業(18)
「ベアリング」と聞くと、リングの中に鉄球が入った回転を円滑にする金属部品を想像すると思うが、私は片手に乗せられる直径5センチから10センチ程度のイメージを持っていた。もちろんもっと大きなものや、小さなものがあることは知っていたが、想像したことがなかった。
御所市にある「伸和鉄工所」(丸山和俊社長)は、そんなベアリング用の部品を作っている企業だ。創業者の丸山光俊氏が大阪市で1974(昭和49)年4月に創業した当初は、水道管・ガス管の継手製造を行い、中でも大型の鋳造部品を得意としていた。
年号が昭和から平成に変わるころ、大手産業機械メーカーから大型鋳造部品の引き合いを受けて、それを機に継手製造からベアリング部品製造にシフトしてきた。受注も順調に増加し量産体制を強化するため、2001(平成13)年に御所市に新工場を開設、現代表の丸山和俊氏が入社した年でもあった。
確かな技術と、「相談された案件は断らない」という社長の信念から、一品一葉の受注も増え、売り上げも順調に増加していた。2008(同20)年には隣接地を購入、第2工場を開設するまでに至るが、ここでリーマンショックに見舞われる。売り上げは増えたが、多品種小ロットの案件が多かったこともあり、採算が合わず利益の出ない苦しい状況が続いたようだ。
第2工場の新設に伴って大きな借り入れも行った後であったため、会社の存亡に関わるくらいの大変な時期もあったと聞かれる。
15年に丸山和俊氏が社長に就任した後は、従業員のモチベーションにもつながるように社内体制の見直しや、社員教育、研修や勉強会といった人材面での強化とともに、もとより大型鋳造品を得意としていた背景から、大型ターニングセンタや大型マシニングセンタといった設備投資も積極的に行うことで、他社ができないような大型精密機械加工に資源を集中させてきた。
それらの努力が実を結び、今では直径2メートルを超える超大型ベアリングの部品やガスタービン部品の加工を手掛けるなど、技術力の高さに強みを持っている。当社の加工した部品が使用されるベアリングは、精密機械、船舶、風力発電、鉄道車両、建設機械、鉄鋼など産業分野に幅広く使用されている。
今秋にISO9100を取得予定で、航空宇宙分野も視野に入れ、技術の研さんに努めているという。取材時に工場を見学させてもらったが、鎮座する大型加工機械はどれもマイクロバスやトラックほどの大きさがあり、まるで童話「ガリバーの冒険」の世界に入ったような気分になった。
(帝国データバンク奈良支店長・近藤穣治)
【伸和鉄工所】
御所市城山台166の11