〝時代の気風〟反映の鐔 奈良ゆかりの作品も - 乱世を生き抜いた名品掲載
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「刀の鐔図譜―戦国武士の生き様―」後藤昭夫藝術館図録第二輯
小窪 和博・著/後藤 黄太郎・撮影
本書は、刃物のまちで有名な岐阜県関市にある後藤昭夫藝術館の図録第一輯(しゅう)「刀の小道具図譜―戦国武士の生き様―」(2021年10月発刊)に続く第2弾。著者の小窪和博氏は岐阜市在住の医師。撮影は、後藤昭夫藝術館館長の後藤黄太郎氏。
本書には、南北朝から江戸時代にかけての、「実戦が行われた室町・安土桃山時代を中心に、一部江戸時代前期に使われた鐔(つば)」(序文から)が掲載されている。(初公開を含む約225点)
鐔には柄(つか)を握る拳の防御、滑り止め、刀身の安定などの役割があり、作者や系統により特徴が異なり、図柄・作風には、その鐔が生まれた時代の気風が反映されているという。
収録された鐔には、戦乱の世の戦いの際についた「受け傷」が多くあり「武士が乱世を生き抜いた証拠」が残されている。武士(もののふ)たちの息遣いが聞こえてきそうで、趣向を凝らした図柄の数々は見飽きることがない。
中には、世阿弥の謡曲「三輪」の図を描いた「三輪透(すかし) 鐔」(古正阿弥、室町―桃山時代)▽秋野に遊ぶ鹿を鮮やかに透かした「春日野透 鐔」(京、桃山)▽奈良鍛冶(かじ)を冠する奈良甲冑(かっちゅう)師の一派による「鉈(なた)透 鐔」(奈良鍛冶家國〈かじいえくに〉、江戸前期)など、奈良とゆかりの作品も掲載されていて興味深い。
A4判、布張り上製本、フルカラー129ページ、税込み3500円。後藤昭夫藝術館発行。
問い合わせ・購入申し込みなどは同館、電話0575(22)3081。Webサイトは、https://vavaakio.studio.site
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「武鑑透 鐔 林重光」(江戸時代中期)