高校生以上の不登校 - 不登校に向き合うvol.6

中学生による通塾率が非常に高いなど、奈良県は教育熱心な県というイメージが色濃くあります。夜遅くまで塾に通い、一生懸命勉強して志望高校に合格し、順風満帆と思っていた矢先に、子どもが突然学校に行かなくなった保護者の気持ちは穏やかでいられるはずがありません。
教育熱心であるがゆえに「なんとか早く学校に戻さなければ」と躍起になる保護者も多いでしょう。しかし、高校生以上になると進路や就職などに対する思いが複雑に関わってくることから、小中学生とは少し異なるアプローチも必要です。
【取材協力】
一般社団法人ニュールック「TOB塾」
代表理事 山口真史さん
ーー“一緒に考える”が大切
学校に通うことは大切なことです。しかし何か思うところがあり子どもが不登校となった時、保護者が「なんとかしなければ」と焦れば焦るほど、子どもは心を閉ざしてしまうことも少なくありません。
一方で、これまで勉強や生活態度についてとても厳しい態度で接してきた保護者が、不登校になったとたん、突然手のひらを返したように優しくなると、子どもは困惑し親に対して「何か裏があるのではないか」と疑心暗鬼になってしまいます。
山口さんはこの点について「親もわからないという立場で、カウンセラーなどの第三者に入ってもらうのが良い」と言います。親子だけで話をするとどうしても互いに感情的になりやすいです。また親の発言が子どもにとっては“提案という名の義務”ととらえてしまうこともあります。
高校生になれば子どももある程度自分を知っているものです。対等な立場で一緒に考えるようにするのがよいでしょう。
ーー進路決定は慎重に
新型コロナウイルス感染症流行による一斉休校により、小中学校でもオンライン授業が積極的に取り入れられました。これによって、現場の先生たちの通信制高校に対する理解が深まったと山口さんは感じています。
また、通信制高校の学習メニューも年々豊富になり、学びの幅も広がりました。通学回数を選択できることもあって、学校に行きにくい子どもと保護者が注目しています。ただ、パンフレットやホームページだけでは見えてこない部分もあることを忘れてはいけません。
例えば、「年間スクーリング4日間」とあると「4日間で大丈夫」と感じますが、万が一その4日間に登校できなかったら単位が取れないという場合もあります。大人にとっては「たった4日間」でも不登校を経験した子どもにとっては、その「絶対に出席しないといけない4日間」のプレッシャーは厳しいかもしれません。「全日制高校から通信高校に転入して、そこでもうまくいかないとさらに心の傷は深まるばかり。慎重に選んでください」と山口さん。
ーー”学校“にとらわれすぎないように
紙は一度折り目がついてしまうと、その折り目を無くすことはできません。心も同じです。心のエネルギー曲線が、完全に折れてしまわないよう、しなやかに上下するような曲線を描きながら回復に向かうのが理想です。
「なんでも良いので動き出すことが良いです」と山口さん。勉強でなくて良いそうです。デジタルネイティブな子どもたちは、ネットやSNSなどを見るだけで、表面的にできた気分になっていることが多いです。動いて経験して自分の身体で学んでいくことがとても大切です。動き出すことは非常に面倒だったり、勇気がいることかもしれませんが、動かない時間が長くなれば長くなるほど、さらに動き出すのに力を要してしまいます。
そして保護者はあれこれと口出しをせず、子どもが安心して過ごせる場所を用意して、本人が目指すところを一緒に考えていきましょう。
ーー1人1人に合わせたサポートを
山口さんが運営するTOB塾があえて「塾」としているのには理由があります。「保護者も子どもも、リスタートやひきこもり、フリースクールという言葉に抵抗を感じてしまう人が多いです。だからあえて“塾”にしています。でも勉強を教えるだけの場所ではありません。自分らしい人生を探せる場所であることを大切にしています」と話します。
1人1人に合わせて、目指すところに向けて、一緒に考えながら進んでいけるようにサポートしています。
西宮本校、京都南教室、奈良校の3カ所で、たくさんの中高生たちを支援してきた山口さんは「家族だけで抱え込まず、ぜひ一度相談にきてください」と話してくれました。
TOB塾代表の山口さん
一般社団法人ニュールック『TOB塾』 奈良校
奈良市学園南1-1-18
TEL:090・6053・7855
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