分身ロボットを使って学校とのつながりを目指す - 不登校に向き合うVol.5
不登校の小中学生を支援する奈良教育大学(奈良市)の「居場所ねいらく」では、不登校支援の一つとして分身ロボットを使い、自宅から出ることも難しい子どもたちとの交流を始めています。
分身ロボット「オリヒメ」を通して居場所「ねいらく」のスタッフとカードゲームを楽しむ様子。
ロボットは自宅からインターネット経由で子どもが操作している=奈良市高畑町の奈良教育大学・居場所「ねいらく」
分身ロボットは、オリィ研究所(東京都)によって開発された遠隔操作ロボット『OriHime(オリヒメ)』を使用。カメラとマイクが搭載され、インターネット経由で操作でき、会話をしながら顔や腕を動かすことも可能です。
オリヒメは、障害や入院など距離や身体的問題によって行きたい所へいけない人のもう一つの身体として開発され、主に重度障がい者や肢体障がい者など外出困難者を対象に活用されてきました。近年ではひきこもり当事者と支援施設との交流などにも活用の範囲が広がっています。
同所ではこれまでにも、zoomやMeetなどのオンラインミーティングツールを活用したオンライン支援を行ってきましたが、自身が映ることへ嫌悪感を感じたり、表現ツールが音声と言語表現に限定されるなど、当事者の子どもがなかなか参加しづらいという課題もありました。
オリヒメは、操作側の姿は見えず、ロボットの動きだけで反応することもできるため、対人のハードルが下がると考えています。
現在は、奈良県内在住の小学5年生と中学2年生が毎週1回、オリヒメを通して同所の活動に参加。居場所ねいらくのスタッフや参加している子どもと一緒にカードゲームを楽しむなど、積極的に交流しているそうです。
居場所に参加している子どもたちからも「かわいい」「操作してみたい」と興味を示し、子どもたちなりの活用方法を見出してくれることも期待されています。
居場所ねいらくを運営する子ども・若者支援専門職養成研究所の代表を勤める生田周二奈良教育大学名誉教授は「居場所ねいらくは不登校支援において県と地域を繋ぐ中心的な役割を担っていると考えています。オリヒメを新しい不登校支援の一つとして発信できればと思います」と話します。
分身ロボットによる不登校支援は始まったばかりで、今後は子どもたちが落ち着いて参加できる活用内容や参加方法についてさらに検討する必要があります。
オリヒメを活用して、居場所から学校へとステップアップさせ、登校していなくても先生や友だちとの交流が図れるようなスタイルの第一歩となればと思います。
【取材協力】
奈良教育大学ESD・SDGsセンター
子ども・若者支援専門職養成研究所
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