関西文化芸術高等学校 - 芸術活動が社会とつながる そのチャレンジが自信に
Mission ~危機のとき 求められる創造と守るべき使命~
今、求められる新しい芸術高校の価値
関西文化芸術高等学校
芸術活動が社会とつながる そのチャレンジが自信に
学校法人奈良立正芸術学院は、昭和55(1980)年の創設以来、子どもたちの「個性の尊重と伸長」を教育理念として掲げ、芸術教科の指導を通じ、生徒一人ひとりの個性を活かした創造的な教育活動の取り組みにより、豊かな人間形成を目指してきた。
そして平成30(2018)年、生徒の興味・関心や進路等の多様性、目まぐるしく変化する社会に対応すべく、広域通信制高等学校 関西文化芸術高等学校を開校させた。
同校は、5つの専攻芸術分野を有し、一流の講師陣が各専攻を指導する。それぞれの専門知識と技術の習得を通じて、自ら考え表現する「クリエイティブな力」を培う教育をおこなっている。
また、学校生活や芸術で社会とつながる活動を通して「社会性」を身に付け、社会に貢献できる有能な人材を育成する事を目指している。
高等学校としての開校から5年、「芸術で描く、君の未来」をスローガンに、同校をけん引する大橋理事長・校長に5年の歩みと未来への展望をうかがった。

5つの専攻分野で、芸術を深く学ぶ高等学校
――関西文化芸術高校では、どのような学びができますか。
大橋 美術・デザイン・クラフト陶芸・音楽・パフォーマンスの5つの専攻からなる芸術分野に特化した学びが可能です。美術専攻は日本画、油画、立体造形、デザイン専攻はCG、まんが、イラスト、キャラクターデザイン、クラフト陶芸専攻は電動ろくろ、オブジェ制作、ガラス工芸、音楽専攻は吹奏楽、楽典、聴音・ソルフェージュ、ピアノ・声楽、パフォーマンス専攻はダンス・演技・声優などの授業を行っています。生徒は3学年あわせて190名。生徒それぞれが目標を持って高校生活を送っています。
――通信制課程にしている理由は何ですか。
大橋 理由は、ひとえにより多く芸術分野の授業時間を確保するためです。通信制高校のカリキュラムはフレキシブルに校時編成することができ、まとまった芸術活動の授業時間を確保することができます。そのことにより本校では、毎週4回の3校時連続の専攻授業や、週2回の自主制作・自主練習校時が可能になり、同じ志を持つ仲間と切磋琢磨する環境を共有することができています。
――高校になる前は、芸術系の専修学校だったそうですね。
大橋 はい。昭和55年に各種学校としてスタートし、平成10年に専修学校関西文化芸術学院を開校しました。当初は美術・陶芸・音楽専攻から始まり、順次専攻を増やしてきました。 しかし15歳人口そのものの減少と、高等学校教育へのニーズの高まりに背中を押され、平成30年に関西文化芸術高校として新たなスタートを切ることにしました。
社会とつながる芸術活動 各方面からの評価が生徒の自信に

――高校開校から5年、教育で最も力を入れてられることは。
大橋 社会とつながる芸術活動です。
「なら国際映画祭」では、学校全体でオープニングセレモニースタッフとして誘導などの裏方として下支えしています。また、星空上映会スタッフ、ユース審査員や、星空上映会前に演奏・ダンス・芸術体験ワークショップで地元のビッグイベントを盛り上げています。
大和郡山市、大和郡山市商工会、大和郡山市観光協会、大和郡山市文化体育振興公社と令和元年に包括連携協定を締結。芸術を通して地域社会の発展に寄与しています。大和郡山市は名産のいちじくを使用した地元特産品としてワイン「無花果の一滴」を開発する中で、本校生徒がボトルラベルをデザイン。味もラベルも好評で、毎年販売されるもすぐに完売する人気となりました。同シリーズで開発されたスパークリングワイン、ドライいちじく&いちじくシロップ漬けでもラベルデザインを担当しています。
同じく大和郡山市の春のイベント「大和な雛まつり」、秋の音楽イベント「こおりやま音楽祭『樂』」でもポスターを毎年デザインしています。



令和3年には、肺がん患者の半生から、患者やご家族の思いをマンガ動画で分かりやすく伝えるため、NPO法人肺がん患者の会「ワンステップ」と共同プロジェクトで、マンガ動画「#私とがん」を制作。コロナ蔓延下での制作となり、同会と生徒たちはリモートで講義や打合せを重ねながら、マンガと動画を完成させました。


他にも、奈良市西部公民館では、小学生を対象とした芸術ワークショップを開催、奈良市保健所からは、自殺対策強化月間ポスターを依頼され毎年制作しています。


また、平城宮跡歴史公園のオリジナル商品「遣唐使船スパイス」のラベルデザインや、奈良を拠点にeスポーツの普及・発展を目指すタヂカラ株式会社主催の、eスポーツ「ギルティギア ストライヴ」の大会ロゴデザインや、Esportsプロゲーミングチーム「AMATERASU」チームユニフォームデザインを依頼され制作しました。

――これら社会とつながる芸術活動が生徒に及ぼす良い影響は。
大橋 社会性と自信の創出です。芸術は自分の内面の発露ですから、もとは個人的なものです。しかしその作品が、社会とつながることによって、人に何かを伝える手段になり、商品として選ばれるものにもなり、人と人をつなぎもてなしをするというような、社会的な意義を持つものになります。社会とつながるデザインを作るには、商品であればその特性、背景、作っている人の思いなど多くの要素を調べヒアリングする必要があります。イベントのスタッフであれば、そのイベントの目的、参加者属性、安全管理などを理解したうえで、いかに来場者に楽しんでもらえるかを考える必要があります。いずれも生徒だけでなく、その事業に携わる学外の大人とのコミュニケーションが必須になり、生徒の立場だけでなく、広い視点で物事を考えることになります。試行錯誤して完成させた自分たちの作品や行動が社会で評価されることは、生徒たちにとって大きなインパクトとなり、自分への自信につながっています。社会とつながる芸術活動を通じ、入学当初から3年間で生徒は自分に自信を持ち、大きく成長します。
――今後の目標についてお教えください。
大橋 芸術には人に元気を与える力があります。生徒たちには、自分たちの学んでいることは人に感動を与え、元気にすることができるのだということに自信を持ってほしいと思っています。高校生の情熱は本当にすごいです。卒業後もその情熱を絶やさず、本校での経験を活かしながら成長し、自分を磨いていってほしいです。本校の目標としては、社会で、特に芸術の分野で活躍する人材をさらに輩出していきたいです。
在校生インタビュー
関西文化芸術高校の社会とつながる芸術活動を通して生まれるクリエイティブな力と社会性。生徒はどのように自分の成長を感じているのか、2人にインタビューした。
亀井美唯奈(かめいみいな)さん 3年パフォーマンス専攻
小学生の頃から学級代表など人前に出る方でした。興味があった声優の仕事を専門的に勉強できる高校を探し、関西文化を知りました。ここでは普通の公立高校ではできないこと、例えば、なら国際映画祭にボランティアで参加させてもらい、オープニングセレモニー会場運営を経験。今年はユースシネマインターンとして映画配給の仕事も。初めてで手探りですが、チラシやPVを作り宣伝の準備をしています。NHK杯全国高校放送コンテストにも出場して朗読部門で昨年奈良県優秀賞をいただき、放送部ではありませんが奈良県高文連放送研究会代表として奈良県総合文化祭で朗読をしました。私は色々なことをこの学校で経験させてもらった恩返しとして生徒会長に立候補し、三代目会長になりました。私の代で新しいことに挑戦しようと頑張っています。
関西文化芸術高校3代目生徒会長。なら国際映画祭ではスタッフ活動に積極的に取り組み、今年度はユースプログラムで映画配給についても学んでいる。演劇コンクールでは脚本担当。自分の夢である声優を目指し、何事にも全力で取り組んでいる。
下原優里(しもはらゆり)さん 3年デザイン専攻
中学から絵が好きで、絵を描ける高校、特にデジタルで、液タブを使える条件で探して出会いました。学校説明会も生徒主体で雰囲気が良くて、ここが自分に一番合っていると思い決めました。常に自分の作品をどこかに出展するチャンスをもらえることが新鮮です。作品制作はまずフワッとイメージを考えて何案か作ります。先生や友人の意見を聞いて修正をしながら、最後は自分が納得できるように完成させます。「大和な雛まつり」のポスターに選ばれた時はうれしくて、家族で大和郡山市を訪れました。お母さんも大喜びで、町歩きで見つける度に写真撮ったりして。高校で初めてプロが使うデザインソフトのイラストレーターやフォトショップを使い、将来は絵やデザインの仕事につきたいと思うようになりました。
同校が包括連携協定を結んでいる大和郡山市の「大和な雛まつり」ポスター制作や、大和郡山産いちじくのドライフルーツとシロップ漬け「無花果の一滴」のラベルデザインで採用された生徒。本校が地域や企業から依頼される「社会とつながる活動」で力を発揮している。
関西文化芸術高等学校の沿革
1980年4月 学校法人奈良立正芸術学院 創設 各種学校 奈良立正芸術学院 開校 (美術・陶芸・音楽専攻)
1981年4月 NHK学園高等学校の集団生協力校として認可
1984年10月 音楽専攻 第1回音楽会(定期演奏会) 以後毎年開催
1986年9月 奈良県ジュニア美術展覧会出品 以後毎年大賞他多数受賞
1994年4月 デザイン専攻の科目にCGを導入 PC室を開設
1998年4月 専修学校 関西文化芸術学院 開校
1999年4月 舞台芸術専攻(現パフォーマンス専攻) 設置
1999年10月 舞台芸術専攻 第1回定期公演 以後毎年開催
2000年4月 創志学園グループ 参入 クラーク記念国際高等学校と連携
2001年10月 第1回京都駅ビル芸術発表会 以後2017年まで毎年開催
2005年8月 奈良県吹奏楽コンクール出場 以後金賞7回受賞
2008年8月 米国Tuacahn High Schoolと姉妹校提携
2017年8月 第18回高校生国際美術展 内閣総理大臣賞受賞
2018年4月 関西文化芸術高等学校 開校
2019年10月 大和郡山市及び同市商工会・観光協会・ 文化体育振興公社と包括連携協定を締結