きょうから師走。今年も残りわずかだが、…
きょうから師走。今年も残りわずかだが、奈良ではまだ大きな行事が二つ残る。一つは奈良マラソン、もう一つが春日若宮おん祭だ。
おん祭は国家安寧や五穀豊穣(ほうじょう)などを祈る春日大社の摂社若宮社の例祭。平安末期から1度も途切れることなく続き、神楽や猿楽などさまざまな芸能が神様に奉納される。
筆者は約10年前、おん祭で最も華やかな行事「お渡り式」を体験取材した。与えられた役目は田楽座の花笠持(はなかさもち)。花笠は田楽を演じる人が被るもので、木彫りの奈良人形が飾られ、一刀彫のルーツとされる。
当日はえんじ色とだいだい色の水干(すいかん)姿で行列に参加。直径80センチ、重さ3キロほどの大きな花笠を2人で持ち、約3キロほどの行程を歩いた。
華やかな花笠は人気で、無数のカメラが向けられて誇らしい気持ちになった。ただし、観衆に手を振るのは厳禁。神様の使いには威厳も必要なのだ。
かつて大和一国挙げての祭礼といわれた伝統行事。900年に近い、歴史の一端にふれる貴重な経験だった。今も師走を迎えると当時の興奮が蘇る。(法)