鹿に尋ねると「おじぎじゃないよ」と言わ…
鹿に尋ねると「おじぎじゃないよ」と言われそうだが、人の目にはそう映る。奈良公園の鹿が鹿せんべいをおねだりするときに見せる「おじぎ」は、観光客の財布と頬を緩ませてきた。
そんな所にも影響が、と驚かされる研究成果を奈良女子大の遊佐陽一教授らが発表した。コロナ禍で観光客が激減したことで、鹿がおじぎを忘れかけているという。
コロナ禍前は1頭当たり平均10回だったおじぎが6回に。鹿せんべいの売り場近くに集まる鹿の数も半分以下に急減した。遊佐教授らは今後、鹿がおじぎをどのように学び、伝えているかも研究していくという。
北海道の「のぼりべつクマ牧場」を訪れたとき、巨大なヒグマが両手を広げて観光客に餌をねだるのに驚いたが、鹿のおじぎにも共通する要素があるのだろう。
野山の鹿は人を見ても逃げるだけ。人の生活圏で共に生きる姿こそ「奈良の鹿」であり、おじぎはその究極の仕草だろう。
ただ、鹿の「おじぎ」がおじぎでないことは、手にした鹿せんべいを強引に奪い取られることで分かる。あくまで野生であることをお忘れなく。(増)