若い頃はすぐお腹が減るが、小遣いは少し…
若い頃はすぐお腹が減るが、小遣いは少ししかない。そんな時に、筆者の空き腹を満たしてくれたのが奈良市の「びっくりうどん三好野」だった。その名店が15日を最後に閉店する。
昭和30年創業の大衆食堂。メニューは多彩だが、名物のうどんは廉価で「びっくり」するほど量が多い。個性的なとがった味ではなく、ほのぼのとした味わい。
中学時代、休日は友人と奈良市に出掛け、三条通にあった「友楽会館」で映画を見て、びっくりうどんをいただくコースが定番だった。昭和の青春である。
11日の午前11時過ぎに同店の前を通ると、行列ができていた。奈良新聞の報道などで閉店を知り、矢も楯もたまらず駆けつけた三好野ファンも多いのでないだろうか。
閉店理由はコロナ禍による経営難と後継者不在という。同様に店を閉めた家族経営の老舗書店、町の食堂が県内にどれほどあるだろう。懐かしい風景が次々に消えていく。
と感傷的になるのはよそう。時代は移り、三条通は近年、新しくおしゃれな装いに。ここで、令和の青春を過ごす人々が多いのだから。(栄)