東大寺二月堂の修二会では、3月13日の…
東大寺二月堂の修二会では、3月13日の未明、別名の由来となった「お水取り」が行われる。
かがり火に照らされた石段を練行衆(れんぎょうしゅう)が下るとき、一帯を雅楽の音色が包み込む。演奏する南都楽所(なんとがくそ)の始まりは平安時代にさかのぼり、奈良と雅楽は深い縁で結ばれている。
その雅楽で主旋律を受け持つのが篳篥(ひちりき)で、先端にリードを付けて息を吹き込む。小さな見た目と裏腹に、太く大きな音が出る。
リードの材料となるヨシは大阪府の淀川河川敷で採れるが、昨秋、生育地がつる草に覆われて全滅、放置すれば絶滅につながりかねないと、雅楽協議会が呼び掛け、先日、つる草抜きの作業が行われた。
集まったボランティアは実に約400人。天理大学雅楽部の部員も汗を流し、演奏も披露した。生育地は「鵜殿のヨシ原」と呼ばれ、良質のヨシが採れるという。
雅楽の楽器は篳篥に限らず、笙(しょう)や龍笛も自然素材で作られる。光が降り注ぐような感覚は、そこから生まれてくるのだろう。自然を守ることが伝統の継承を可能にする。(増)