人から話を聞くのが新聞記者の仕事だ。しかし、相手は話をしたいと思っている人とはかぎらない。時には事件の被害者ら話を聞くのもはばかられる人からも聞かなくてはならない。

　テニスの大坂なおみ選手が心理的負担を理由に全仏オープンの記者会見を拒否。その後、うつを告白し同大会を棄権した。

　筆者も試合に敗れて泣き崩れる高校球児から無理やりに話を聞き、心が痛んだことがある。同じ話が続いたり無知な質問もあり、会見が試合後の選手たちの負担になることは理解できる。

　が、報道には選手たちの生の声は欠かせない。また、選手たちにとっても、報道によって自分の活躍や思いを支援者らに伝えることができる。

　今回の件で残念なのは、大坂選手と大会主催者とのコミュニケーション不足だ。大坂選手はSNSで自分の思いを一方的に発信してしまい、それを受けた主催者も杓子定規に罰金や警告を決めてしまった。

　選手がSNSという発信手段を持つことによって生じた新たな問題だといえる。選手の心の健康は大きな問題であり、報道側も自省が必要だ。(法)