国原譜

「非常にまじめな人。まじめ過ぎてエピソ…

 「非常にまじめな人。まじめ過ぎてエピソードがすぐに浮かばない」。大野玄妙・法隆寺住職の訃報を聞いた古代建築史学者の鈴木嘉吉さんの言葉だ。

 毎年春秋の夢殿特別開扉や正月の修正会をはじめ数え切れないほど取材させてもらったが、同じ思いを感じる。大野師がインタビューで口にされるのは、愚直なまでに世界の平和と人々の安寧への願いだった。

 優しく気さくな人柄でもあった。何度か酒席を共にさせてもらったが、紹興酒をおいしそうに飲む姿が今も脳裏に浮かぶ。

 晩年は昭和24年に焼損した金堂壁画の一般公開に尽力された。現在の文化財保護法制定のきっかけとなった人類共通の宝だが、「文化財を守る大切さを学ぶには、焼けた壁画を実際に見てもらうことが一番」と強調していた。

 再来年の令和3年には聖徳太子1400年御遠忌を迎える。寺の最も重要な行事を目前にして病に倒れ、さぞ無念だったろう。

 鈴木さんは「大野師は年々、太子への思いを深めていたように思う」と言う。太子の和のこころと同様、大野師の思いも寺に伝わっていくはずだ。(法)

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