「天理ラグビークラブジュニア」、指導者確保が課題 - 地域移行進む中学部活動の現状を探る

環境維持にも支援必要
有志の情熱だけに頼るのも限界
全国の公立中学校を中心に部活動の地域移行が進んでいる。奈良県でも2026年度から中学校教員の指導による休日の学校部活動を廃止するという方向性を定め、休日の部活動の地域連携、地域移行が進む。受け入れる側の現状はどうなのか、中学生を対象にラグビーフットボール競技を指導する「天理ラグビークラブジュニア」を取材した。
「チームでの私の役割は監督兼、主務兼、会計兼、連絡係兼、グランド手配担当」と笑うのは、「天理ラグビークラブジュニア」の種村和也(52)さんだ。種村さんは平日は県内企業で働き、土日、祝日を競技指導に費やす。
チームは約10年間、「奈良ジュニアラグビースクール」として活動してきたが、24年に天理中・高・大学などを中心に天理市内のラグビーチームで組織する「天理ラグビークラブ(TRC)」の傘下に入り現在のチーム名になった。
TRC入りは、チームが同市杣之内の親里ラグビー場を練習拠点にしてきた縁で実現したが、その背景には中学部活の地域移行が本格化する今後を見据え、ジュニア部門をつくりたいTRC側の意向があった。
現在2、3年生が34人で、うち女子が3人。4月には1年生約20人が入部した。部員は天理市だけでなく県全域、一部は京都府南部からも受け入れている。
「タックルは姿勢を低くする必要があるが、最近は瞬時に低くなれない子が多い。足首、股関節などを柔らかくする練習から始める」(種村さん)と、基礎からしっかりと教える。
「失点を最小限に抑えた我慢のラグビー」を戦いの柱に据え、昨年11月に開かれた全国大会の近畿予選では3位決定戦に食い込んだ。
天理高、御所実高をはじめ全国のラグビー強豪校に多くの卒部生が在籍しており、卒業後は学校の部活と同等以上に将来が開ける。
部活の受け皿としてしっかり機能している反面、課題もある。指導者の確保だ。種村さん自身、平日は会社員、監督業は無償ボランティアだ。「全国大会は会社が多忙な年末にある。もし出場ということになれば有給を取らなければならなかった」と振り返る。ボランティアとはいえ、1日8時間の座学を5日間、3泊4日の合宿講習会を経て日体協のラグビー指導者のA級資格を取得している。「ラグビーが好き」という情熱だけでは続けられない。
チームは現在、土日祝日に朝から夕方まで練習している。「本当は毎日少しずつでもボールに触れる機会をつくりたい」と種村さんは話すが、誰が平日に指導するのかという問題に直面する。指導者に報酬を支払う余裕のあるチームは多くない。
ボランティアだけに感謝されることが多く、「やって当たり前」の教員とは違うという。参加者や保護者の感謝はやりがいにつながり、指導にも力が入る。教わる側にも良い効果をもたらすと思われるが、有志の情熱だけに頼るのも限界がある。
中学生がスポーツと出合う環境を維持していくためにも、多くの支援が必要だ。
2025年5月7日付・奈良新聞に掲載