シャクヤク酵母を使った清酒が完成 - 奈良県御所市の「葛城酒造」
日本酒の銘酒「百楽門」の醸造元として知られる「葛城酒造」は1月、シャクヤク酵母を使った初めての清酒、純米吟醸生酒「百楽門 華」を完成。同社の谷口明美(55)、久保伊作(70)両代表らが5日、奈良県御所市役所を訪れ、山田秀士市長に報告した。酵母、酒米、水のすべてが御所市産。両代表らは「地域色の強いお酒が完成した」とPRした。
シャクヤクは、根が漢方や生薬の原料になるボタン科の多年草。県産業振興総合センターが2023年、シャクヤクの花弁から検出した酵母が低アルコールの清酒やワインの醸造に使えると発表し、御所市増の「さんろく自然塾うめだファーム」代表で医学博士の楳田(うめだ)高士さん(76)は「地域活性化の起爆剤にできないか」と着目。分析の結果、同農園で漢方薬の原料として栽培していたシャクヤクの酵母でも醸造できると分かった。
23年11月、楳田さんは葛城酒造と、日本酒に詳しい西川憲造さん(53)に呼びかけ、酒造りプロジェクトを始動。24年2月に試作したどぶろく(濁り酒)は、辛口で爽やかな酸味が特徴だった。
今回は、シャクヤク酵母を採取する農園で生産した酒米キヌヒカリ720キロを使い、清酒造りに初挑戦。金剛山系の地下100メートルから汲み上げた水質のよい伏流水(硬水)を使い、酒の銘柄「華」のイメージで甘味を強くして、昨年とは全く異なる甘口の清酒(アルコール度数15%)が完成した。
既に試飲していた山田市長は「フルーティーでおいしかった」と高評価。甘くスッキリ爽やかな酸味で飲みやすく、独特の華やかな香りで食前酒としても楽しめるという。
杜氏(とうじ)の久保代表は「シャクヤク酵母は発酵の力が弱く、雑菌との戦いで腐敗するリスクがある。アルコール度数を高めながら甘味と酸味のバランスをとるため、発酵の具合を見ながら温度調整した」と野生酵母による酒造りの難しさを語った。
清酒「百楽門 華」はJR・近鉄御所駅から徒歩すぐの「新地商店街」で3月8、9日に開かれるオープンシャッターイベントや、5月の大型連休前後にさんろく自然塾うめだファームのシャクヤク畑の花見イベントで味わえる。
購入の問い合わせは、いずれも御所市内の東川酒店、電話0745(62)2335、さんろくうめだ酒店、電話080(4010)3600。