ニッチトップを目指す! コスティック. 「面白そう!」と直感 - 奈良の自慢企業(29)
御所市の住宅街にあるコスティック.。知る人ぞ知る有名企業だ。
坂本貴則社長の祖父が当地でサンダルなど履物製造を行っていた坂本株式会社は、流行の変化と安価な海外製品の流入によって徐々に事業を縮小していた。車好きが高じて大学で工学部の自動車コースを選択し、卒業後一般企業に就職した坂本社長は、1年間の海外留学を経て、家業に勤めることとなった。
家業での経験を踏まえ、履物の卸売を行うコスティック.を2006年に設立した。オリジナル製品のナースサンダルがヒットしたことで事業は安定したかに見えたが、大手の参入によって数年で事業は縮小。その頃から、バッグや靴、雑貨類など、はやりそうな商材を輸入してインターネット販売を始めていた。
早いタイミングで扱った商材はいったんはよく売れるものの、ブランディングやマーケティングの不足もあって、またもや後発の大手企業の波にのまれてしまう。
その頃、ついに現在の事業の屋台骨とも言える商材「レーシングコックピット」と出合う。レーシングコックピットとは、自宅内で自動車の模擬運転ができるもので、ハンドル、ペダル、シートなどが鉄製のフレームで配置されている。市場規模も分からなかったが、元来の車好きが高じて「面白そう!」と直感し、レーシングコックピットの自社製品開発に乗り出す。
プレイステーションのゲームソフト「グランツーリスモ」をよりリアルに快適に楽しめるように開発し、価格設定も海外製品と比較して2万円台から10万円程度と競争力を持たせた。また、ニーズがあれば一つからでも創(つく)ってみる「ワガママの創造・ワクワクの想像」のポリシーから、オプション品だけで約200アイテムをそろえ、今では「STRASSE(ストラッセ)」ブランドとして確固たる知名度を確立している。
子ども用の小さなものから、プロレーサーがシミュレーションに使う本格的な製品まで含む豊富なラインアップで、グランツーリスモ世界王者の宮園拓真選手や、国内トップカテゴリーSUPER GT500クラスに参戦中の大津弘樹選手、フランスF4でシリーズチャンピオンとなった加藤大翔選手など、国内外で活躍中のドライバーのサポートにも力を入れている。
将来、STRASSEでレーシングテクニックを身に付けたF1レーサーが誕生するかもしれない。
(帝国データバンク奈良支店長 近藤穣治)
【メモ】
コスティック.
御所市東寺田185の1