スウェーデンに集う日本人研究者 - 宇宙研究 新たな発展へ期待【ふりがな付きニュース】
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スウェーデン宇宙物理研究所の下山学さんと同国初の人工衛星バイキングの模型=スウェーデン・キルナ
オーロラ観測で知られるスウェーデンは、宇宙研究が盛んな国のひとつです。近年、北極圏(※注1)の都市キルナに本部を置くスウェーデン宇宙物理研究所(IRF)に日本人研究者が集い、ここで活動する研究者の1割以上を占めるようになりました。日本の宇宙開発はアメリカとの結びつきが強いですが、アメリカとの協力とはひと味違った役割が担えると期待が高まっています。
キルナは、オーロラを楽しむ観光や、雪と氷でできた「アイスホテル」が有名ですが、街にはロケットのモニュメントが立つ宇宙の街でもあります。IRF広報のアネリ・クリント・ニルソンさんによると「2024年3月時点でキルナの研究者は約30人。日本人は4人います」とのこと。
スウェーデン・キルナにあるロケットのモニュメント
日本やカナダでの研究を経て2015年からIRFで活動している研究員の下山学さん(49)は、スウェーデンなどヨーロッパ各国が共同で設立した欧州宇宙機関(ESA)が中心になって進めている木星圏探査計画「JUICE」(※2)に取り組んでいます。2023年に打ち上げられた探査機に積み込んだ機器の一部をスウェーデンと日本が共同開発し、下山さんは取りまとめ役を担っているのです。
IRFは米航空宇宙局(NASA)などに比べれば、はるかに小さな組織です。でも、下山さんは「技術者と科学者が同じ施設にいるため、アイデアを出してから形にするまでが早い」と、やりがいを語ってくれました。
日本とスウェーデンの協力が本格化したのは、1998年に打ち上げられた日本の火星探査機「のぞみ」から。「スウェーデンで火星探査に関わりたい」と、2003年にキルナにやって来た研究者の二穴喜文さん(48)はIRFの良さを「独自のものを目指す気風がある」と分析します。
スウェーデン・キルナで、研究について説明する二穴喜文さん
30年以上もキルナで研究を続けている山内正敏さん(63)は、日本人が複数いるIRFは「海外の研究機関の中でも特別」と言います。山内さんは、「たくさんの人材を抱えるNASAよりも日本人の役割が大きいIRFでは、日本は、より対等なパートナーと考えられている」と強調します。
近年は、二穴さんらのつながりでIRFに来る日本の若手研究者が増えてきました。長期にわたる宇宙探査では、次世代へ研究をつなげることも重要です。二穴さんは「日本とはもっと一緒にやりたい。そのためには日本国内での人材の育成が欠かせない」と訴えています。
研究所で談笑する日本人研究者。左から山内正敏さん、二穴喜文さん、下山学さん=スウェーデン・キルナ
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