景気DIが4カ月連続悪化 中小の改善に時間 - 奈良経済をつかむ(15)
帝国データバンクが毎月行っている「TDB景気動向調査」で奈良の景気DIが良悪の判断の分かれ目となる50を下回り4カ月連続で悪化している。新型コロナ禍から社会経済活動の正常化が進み、観光地や繁華街はインバウンド観光客であふれ、飲食店や宿泊施設などの利用客は増えている。
ある奈良市内ホテルの客室稼働率はコロナ前の水準近くの80%に達している。自動車は半導体不足などの供給制約が落ち着き生産は前年同月比で増加している。輸出企業にとっては円安による業績の押し上げ効果が追い風となり、県内大手企業の景気DIは改善している。
一方、中小の製造業や運送業などの業種では悪化や横ばいで推移する企業が多い。中国の景気後退懸念や原材料価格などのコストの高止まり、9月は季節外れの猛暑に見舞われたことなど季節要因も影響している。
年間の時間外労働時間の上限規制が設けられる2024年問題に揺れる運送業者ではその対応に追われている。インボイス制度の導入で協力会社に免税業者がいる場合の対応にも苦慮している企業も散見している。
「中国向け輸出が停滞し荷動きが鈍化している」(物流業者)、「コスト増分の価格転嫁が追い付かず収益は悪化している」(製造業者)。
大企業を中心に景況感は改善しつつあるが、中国経済の失速や為替動向などマイナス材料は多い。県内中小企業は先行きの業況判断について慎重な姿勢を示す傾向が高く、業況改善にはしばらくの時間を要する。(帝国データバンク調査課 碓井健史)