「認知症の人と家族の会」の「つどい」に参加して - 認知症とともに歩む【3】
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「認知症」の本人はもちろんですが、支える立場の家族も、本人とはまた異なる悩みを持っています。「認知症になっても安心して暮らせる社会を」という思いから、1980年に結成されたのが「認知症の人と家族の会」。全国47都道府県に支部を持っています。奈良支部が開催する「つどい」に参加して、家族の思いを聞きました。
それぞれの悩みを吐き出して 介護経験のある世話人たちがアドバイス
奈良市内で開催されたこの日の「つどい」には、介護経験を持つ世話人や、常連の参加者、また初めて参加する人など20名ほどが集まりました。
まずは自己紹介。それぞれが介護している状況や、近況を話します。司会をしている世話人の男性は、適宜介護度や年齢などを確認していました。
続いて、現状で困っていることなどを相談。相談されていた例を紹介します(アドバイスなど、複数の話をまとめています)。
認知症と本人に伝えるべきか
《初めて参加するという女性(Aさん)の相談》
【相談】
82歳の夫が、病気になったことをきっかけに出歩かなくなり、もの忘れも激しくなった。認知症と診断されている。昔のことも、今のことも忘れる。マットを上げないことや、薬を飲み忘れることをつい怒ってしまう。本人は認知症と分かっていないようだが、伝えるべきかどうか。もっと外にも出て、一緒に買い物も行ってほしいと思うが……。
【世話人や参加者からのアドバイス】
・認知症と本人に伝えるかどうかは人にもよるが、言われる本人はうれしくないし、言ってどうなるものでもないので、特に言う必要はないのでは。
・薬はお薬カレンダーを使うと、誰が見ても飲み忘れが分かる。
・本人も不安があるところに、Aさんからきつく言われるとさらに辛い。失敗探しにならないように。楽しいことがたくさんある方が、認知症の進行を遅らせるためにも良い。
・これまで買い物に行ってなかった男性に、急に行けというのも無理な話。「やってくれたら助かる」とほめてできることをしてもらい、普段は良い妻をして、月に1回「つどい」のような場所で発散したり、電話相談などを利用して気持ちを吐き出してほしい。
母親の認知症を父親が受け入れられない
《初めて参加する女性(Bさん)の相談》
【相談】
78歳の母親が70歳の時に認知症と診断されている。本人は認知症と分かっていない。
Bさんは認知症について講座も受け、ある程度理解した上で対応しているが、母親と同居している父親が認知症を理解できない。母親が何度も同じことを言ったり、夕方になると「誰かいる」ということも、Bさんは母親に話を合わせたり、流して聞いているが、父親は否定して、怒ってしまう。
父親もストレスをためていて、嘘はつけないという気持ちも分かるが……。
【世話人や参加者からのアドバイス】
・Bさんが身をもって、対応の仕方を父親に見せること。同じことを何度言われても、同じ対応をするなど。
・認知症の介護は一生修業。
・身内の介護の難しさがある。身内より第三者の方が話しやすいこともある。「つどい」に父親も参加してもらい、同じ立場の人の話を聞いてもらうことも一つの手。「男性介護者のつどい」もある。
一人で待つことができない夫
《夫を介護中の女性(Cさん)の相談》
【相談】
デイサービスや訪問介護は利用している。症状は行ったり来たりで、話もできる時できない時があり、2人で過ごしているとこちらが煮詰まってしまう。買い物に行った時、狭い店舗だったため店の前で待っててもらったが、待てずにウロウロしてほかの人に助けてもらった。どうすれば良いか?
【世話人や参加者からのアドバイス】
・「ヘルプマーク」を付けたらよい。市役所でもらえる。(Cさんは実際に利用していたため、それを見た高校生が声を掛けてくれて助かった)
・一人で待つのは難しくなる。ケアマネージャーさんに相談して歩行器を利用したり、広い店ではカートを押してもらうなど、一緒に行く方が良い。
・普段の生活がリハビリになっている。床から立ち上がることも力がいること。
・妥当なところで、高齢者施設への入所も考えても良いのでは。
☆ ☆ ☆
ほかにも、認知症の妻が本人は認知症の自覚はないが、妻の友人には認知症と伝え、分かった上で付き合ってくれているという話もありました。周りが穏やかに接すると、妻も穏やかな態度になるそうです。
また、認知症の母親がデイサービスに通うことを、働いて人の役に立てていると思っているという話もありました。家族が施設の人に頼んで、お金を渡してもらうような例もあるそうです。
デイサービスを嫌がる人に「あなたが来てくれるからみんな助かっている」と話すと行ってくれることもあるとのことです。
【世話人からのアドバイス】
お互いに助け合うことが大事。認知症になっても、できることは残っているので、全部をやってしまわず一緒にすること。認知症の人にとって、できないことはしてもらうと助かるけれど、できることまでされてしまうことは辛いことです。「同じことを何度も言って」と思う場面はあるでしょうが、本人は言ったことを覚えていないのですからイライラせずに、本人を持ち上げて穏やかに過ごすこと。それができれば良いですが、それが難しい。一生修業です。
100人いれば100通りの介護 一人で抱え込まないで
「介護は正解のない問題。100人いれば、100通りの介護があります」と話すのは、同会奈良支部副代表の木村秀子さん。同会の活動は、「つどい」の開催、会員向けの会報の発行、電話相談https://www.facebook.com/kazokunokainara/の3本柱。中でも「つどい」は直接会って話すことで、みんなで一緒に悩みを考えることのできる良い機会になっているそうです。
ミラー現象という言葉があり、介護者の表情がそのまま介護される人に映ります。介護者の気持ちが楽になると、お互い穏やかになり、生活する上でも楽になります。家族の介護は難しく、介護職に就く人でも自分の家族になると難しさを感じるとのことです。
「一人で抱え込まず、話してみませんか。一緒に悩んでくれる人はいます」と木村さん。「つどい」に参加すると、来る前と帰りで顔つきが変わっている人も多いそうです。
☆ ☆ ☆
家族や、身近な人が認知症になることは誰にでも起こりうることです。相談できる場所があることは、一番大事かもしれないと感じました。
【メモ】
認知症の人と家族の会奈良県支部
Tel:0742・41・1026