奈良・春日山原始林を保全 ナンキンハゼ伐採

特別天然記念物で世界遺産にも登録されている奈良市の春日山原始林(298ヘクタール)を保全するため、奈良県奈良公園室は16日、同原始林内で、本来の生態系を脅かす外来種、ナンキンハゼの伐採作業を行った。本年度は成木24本が対象で、この日は最後の3本を伐採した。県は2016年に春日山原始林保全計画を策定。伐採は同計画に基づき、森を本来の植生に戻すため20年度から実施しており、併せて鹿などの侵入を防ぐ保護柵設置による弱った植生の回復や害虫の駆除なども進めている。
昭和初期に奈良公園の平たん部に植樹
鹿が好まないため増殖、生態系を脅かす存在に
ナンキンハゼは中国を原産地とする外来植物。昭和初期に奈良公園の平たん部に植樹されたが、鹿が好まない植物のため増殖し、春日山原始林にも侵入。近年はスギ、ヒノキのほか、シイやカシなどの常緑広葉樹で構成される同原始林の本来の生態系を脅かす存在になってきているという。
このため県は、芽吹いたばかりのナンキンハゼの実生(みしょう)を引き抜く作業を継続的に進めるとともに、20年度に初めて成木の伐採を実施。周辺の生態系に与える影響を最小限に抑えるよう配慮しながら、同年度に25本、21年度は11本を処分。引き続き来年度も10本程度を予定、当初調査で確認された成木の伐採を終える計画。
この日は原始林南側の春日山遊歩道に近い斜面に生えているナンキンハゼの成木3本を対象に、特殊伐採専門の作業員4人がチェーンソーやロープを使って順に作業。うち1本は直径約22センチ、樹高約22メートルあり、伐採後に確認した年輪から樹齢は50年あまりと判明した。他の2本はツタ類が絡まり伐採が難しかったが、幹の途中で切断するなどして切り倒された。
作業には作業員、県職員のほか、植生に関する専門家や市民のボランティア団体「春日山原始林を未来へつなぐ会」(会員約150人)のメンバーも同行。
同つなぐ会の酒井二郎さんは「毎月2回、会員30人ほどが参加して実生の引き抜き、植生保護柵の点検などを行っている」と活動を紹介。原始林の現状や課題の啓発にも力を入れる。
県奈良公園室は「原始林には手を加えないのが理想だが、本来の植生を保全するためには、今後も外来種の侵入など対処に取り組む必要がある」としている。