言語聴覚士が個別指導 子どもの「困りごと」にアシストを
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話したり言葉を理解することが難しい、コミュニケーションが苦手など、「ことば」にまつわることで困っているすべての人を支援するのが「言語聴覚士(ST)」です。スタッフ全員が言語聴覚士の資格を持ち、子どもの発達支援を行っている奈良市の「発達障がい支援よつばCOLORS」は、発達障害の診断の有無に関係なく通うことのできる全国的にも珍しい教室です。学園前教室長の田中美穂さん(36)に、その支援の内容について聞きました。
学園前教室長の田中美穂さん
困っている原因を分析
支援受けにくい子にもフォローを
言語聴覚士は成人から小児まで支援対象も幅広く、聴覚、嚥下、発音などそれぞれの専門分野もある仕事。なぜ困っているのか、その理由を分析し支援するのが特徴です。成人であれば、事故や病気などで言葉などに障害が出た時に、言葉や飲み込みなどのリハビリ訓練を行います。小児の場合は生まれつきの特徴などを見極めて、発達支援を行います。
田中さんは元々病院の小児科に勤めていましたが、病院では発達障害と診断は付かないけれど困っている子や、診断がついても支援を受ける場所がない子を多く見る中で、フォローする場所が必要と考え、6年前に「よつばCOLORS」を立ち上げました。
習い事や塾と同じ感覚で通い
その子のやりやすい方法を見つける
放課後等デイサービスが病院で発達障害の診断を受けた子が通う施設であるのに対し、ここには診断の有無に関係なく「ことば」に関して「困りごと」を感じている子どもたちが習い事や塾と同じ感覚で通います。そういった施設は全国的にも珍しいそうです。
言葉が出にくい子、話せても読み書きが難しい子、本人は頑張っているのに落ち着きがない子、コミュニケーションが苦手な子など、「困りごと」はさまざま。年長から中学3年生まで約120人が通っています。
「困りごと」の中でも、目立たないため学校でも見つけられにくいのが学習障害(LD)です。例えば、本人は真面目に頑張って書いていても、書く字の形が崩れるためにさぼっていると思われる子もいます。この教室では、なぜそうなるのかを脳の仕組みから考え、発達検査とあわせて、その子の得意なこと・苦手なことを観察して原因を探り、その子が一番やりやすい方法(=方略)を見つける支援を行っています。
子どもたちは毎週1回通い、担当のスタッフも固定して1時間じっくり個別指導を行います。一人一人個性も違い、困っている部分も異なるため、カスタマイズしたプリントを使ったり、コミュニケーションが苦手な子にはフリートークやゲームなどを行います。
場合によってはグループ指導やコミュニケーションスキル指導も行います。必要に応じて医療機関につなぐこともあります。
教室ではその子が一番やりやすい方法(=方略)を見つけて言語指導を行う
困っている理由が分かるとすっきり
子どもたちのパワーはすさまじい
「本当に困っている子は、『困っている』ことを伝えられない」と田中さん。困っていることを言葉に出来ないから、走り回ったり学校を休んだりします。
親も気にはなって、子どもを分かってあげたいと思うものの、理由が分からず怒ってしまうこともあります。
「よつばCOLORS」では毎週必ず保護者と話す時間も取り、家での様子を聞いたり、どのように対応すれば良いかを話し合います。困っている理由が分かると、腑(ふ)に落ちてすっきりする保護者も多いそうです。
「子どもたちの持っているパワーはすさまじい」と田中さん。子どもは元々やりたい、出来るようになりたい、分かるようになりたいという思いは持っています。その子にとって理解しやすい方法が見つかれば、自ら学び始めるそうです。
その方法を見つけるのは、早いに越したことはありません。困っている原因が分かり、ここがつまずきやすいので、こういうフォローをすればよい。こういうヘルプの出し方をすれば良いと、早い時期に分かれば、その後の生き方がより楽になります。
同教室には奈良県内はもちろん県外から通う子も多く、常に問い合わせはありますが、現在待ってもらう状況だそう。「気軽に相談できる場所がもっとあれば。子どもに関わる言語聴覚士も増えてほしい」と田中さんは話します。
多様な子どもたちに対応できる専門家の力が、今後ますます必要とされるのではないでしょうか。
【メモ】
「発達障がい支援よつばCOLORS」
奈良市学園中1丁目1207-5
Tel:0742・77・7216(Tel:090・3840・6593)