大方家文書で解く歴史、斑鳩町教委の企画展で講演会
奈良県斑鳩町教育委員会は4日、町文化財活用センターで開催中の企画展「大方家文書展―斑鳩町の地域歴史展2」の歴史講演会を同町龍田南2丁目の町中央公民館で開いた。同町史の編さんに携わる元天理大学教授の谷山正道さんが、同町五百井の大方家に伝わる文書を基に地域の歴史を解説した。
大方家は在野の武士を経て、江戸期に五百井村(当時)の庄屋をつとめた。同町は2016年度から同家文書の調査に着手、2021年3月に調査報告書を刊行した。文書総数は1万3000点近くにのぼり、内容は戦国時代や安土桃山時代の庄園、村政、安永の綿告訴など多岐にわたる。
谷山さんは、文書の写しを示しながら解説。江戸期、庶民衣料の材料として奈良盆地では綿作が盛んだったが、田沼意次主導の幕政下で株仲間が設置された。大和の百姓たちは綿販売の自由回復を求めて広範に連帯して運動を展開したといい、「『これが大多数の百姓の願いだ』という形を示して、ねばり強く運動した点に強みがある」と指摘した。当時の大方家当主は運動のリーダーの一人だった。
幕末の政情不安の中、庶民が世直しを求めた民衆運動「ええじゃないか」は慶応3(1867)年、大和にも押し寄せた。伊勢神宮などの札が降った場所は3000カ所にのぼったとする記述もあるといい、大方家でも降った。「まさに幕府が倒れるというさなかの出来事と斑鳩の接点になる」とした。
企画展は6月26日まで。