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金曜時評

万博と未来社会 夢で終わらせない - 特別編集委員 北岡 和之

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 大阪・関西万博が開幕した。10月13日までの半年間の会期中に訪れた人々は、この時間と空間の中で何を体験し、何を持ち帰ることになるのだろうか。万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「いのち輝く」とはどういうことか。「未来社会のデザイン」とはどういうものか。

 

 ところで、大阪・関西万博に合わせ、同じ会期でもう一つの万博も始まった。「けいはんな万博2025」で、万博後の具体的な展開も視野に入れている。主な舞台は奈良、大阪、京都3府県にまたがる地域で構成する関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)。掲げるテーマは「未来社会への貢献 次世代への解」で、二つの万博のテーマに入っている「未来社会」という言葉が象徴的だ。

 

 ずっと昔から、人間は「未来社会」というユートピアとかドリームランド(理想的な社会、理想郷)を描き続けてきたのかもしれない。けいはんな万博でも、けいはんな学研都市で「誰もが幸せに楽しく暮らせる社会」の実現を目指すという理想・夢が語られる。前進力の柱は科学技術(情報通信技術、ロボット開発、最先端医療、バイオテクノロジーなど)だ。

 

 宮沢賢治は童話『グスコーブドリの伝記』で、架空の人工都市「イーハトーブ」のイメージを描いた。この中で主人公のグスコーブドリが行ったのは、簡単に言うと、自然は人工的(科学技術的)に作れるということだろう。自然がもたらす災害・被害は克服できるという理念だと思う。ただし科学技術の限界はあり、グスコーブドリは自分の生命と引き換えにイーハトーブの危機を救う。

 

 けいはんな学研都市も、科学と暮らしの結び付きによる新しい都市の形を理念とする。「科学と人がつくる未来」の追求である。ここでは、けいはんな万博についての説明にある「コモンズ」という概念に注目したい。元は森林や牧草地といった資源の共同利用地のこと。今は共有財産(資源)を共同で管理する仕組みのことを指すことが多い。昔の日本の「入会地(いりあいち)」に近いものだという。コモンズを仮想空間で創出するのが「メタバース」。現実の場所でのコモンズと、架空の場所でのメタバースということだ。この両方を複合・統一した場所(空間)で、理想的な未来社会を実現しようということだろう。

 

 さて、コモンズもメタバースも道半ば。けいはんな学研都市は、宮沢賢治が一歩を進めた「イーハトーブ」をどう超えるのだろう。

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