5年ほど前である。繁華街をロシア人の知…
5年ほど前である。繁華街をロシア人の知り合いと歩いていて、ロシア人の元同僚というウクライナ人に偶然出会った。ウエイターをしていたが、今は職を探しているらしい。
日本人妻との間に生まれた赤ん坊の写真をスマートフォンで見せ、「かわいくて仕方がない。私はこんなに幸せでいいのだろうか」。人目もはばからず、道端でしばらく号泣していた。
うれしい気持ちは分かるけれど、いくらなんでも大げさではないだろうか。情熱的な南米系の人なら想像できるが、スラブ系でも外国人はやはり日本人とは行動が違うなあと。
それに、異国で定職がないのに、家族3人は今後どうして暮らしていくのだろうか。「幸せに浸りきっている場合ではないのに」。心の底に醒(さ)めた気持ちも。
しかし、彼は正しかった。現在、ロシアの侵攻でウクライナは戦争状態にある。戦うために、妻と幼い子どもと別れる父親の姿をテレビニュースで見た。
ただ平和に生きることが、どれだけ尊いのだろう。コロナ禍の中、外国人労働者は大変な状況で母国は戦争。彼は今どうしているのだろうか。(栄)