国原譜

1270年前から1度も途切れることなく…

 1270年前から1度も途切れることなく続く東大寺二月堂の修二会。平成23年3月11日、2週間にわたる本行の満行を目前に東日本大震災が起きた。

 翌12日の籠松明(たいまつ)の上堂前に当時の別当、北河原公敬長老は参拝者に呼び掛けた。「亡くなった人々のために祈ってほしい、困っている方に心を寄せてほしい、被災者のために力を尽くしてほしい」と。

 東大寺は国家鎮護の寺で、修二会も国の安寧と人々の幸せの祈願が目的。別当自らがマイクを持っての呼び掛けは異例だったが、未曽有の国難を前に居ても立っても居られなかったのだろう。

 東大寺は毎年、大仏殿で地震発生時刻に犠牲者追悼の法要を実施。被災地でも何度も法要を営み、復興への祈りを捧げるなど国家鎮護の使命を果たしてきた。

 あの日から10年。修二会は再びコロナ禍という国難に見舞われた。震災とは違い、感染の危険性は修二会に直接の影響を与えている。

 それでも、感染防止策を尽くし、練行衆たちは不退の行法を続けている。国の安寧と人々の幸せを祈る使命を果たすために。(法)

 

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