国原譜

奈良の民俗食・郷土食と言われる茶粥(が…

 奈良の民俗食・郷土食と言われる茶粥(がゆ)だが、九州生まれで小4の冬に関西へ来た筆者は、残念ながら今まで食する機会がなかった。

 そんな茶粥について詳しくまとめた『茶粥・茶飯・奈良茶碗 全国に伝播した「奈良茶」の秘密』(淡交社)が発刊された。著者は、本紙文化面「新なら民俗通信」でおなじみの鹿谷勲さん。

 元県立民俗博物館学芸課長の鹿谷さんは、各種の民俗調査を重ねるうちに食文化への興味がわき、文献資料などを中心に実態を丹念に調べ上げた。

 志賀直哉、谷崎潤一郎、河上肇ら有名人の文芸作品などの記述を紹介。田原、斑鳩、御杖、東吉野、十津川といった県内各地から山城、三重、佐賀まで、炊き方の違いなどにも触れている。

 明暦の大火(1657年)後、江戸・浅草周辺では「奈良茶飯」が流行。1702(元禄15)年12月、吉良邸討ち入り後に毛利家屋敷に預けられた赤穂浪士10人に、夜食で振る舞われた文献記録も残る。

 終章「スケープゴート茶粥」では、排斥運動にさらされてきた茶粥の「現代史」に言及していて、考えさせられた。(恵)

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