「われらのテナー」として戦前、戦後にかけて一世を風靡(ふうび)した歌手の藤原義江は晩年、高級ホテルとして知られる東京・帝国ホテルに居住していた。さすがはセレブと憧れた人は多かった。

　その名門ホテルが1泊当たりに換算すれば割安の長期滞在宿泊プランを提供。駐車場、プールなど高級ホテルならではの設備が使えるとあって宿泊希望が殺到したという。

　ホテル業界はコロナ禍により、客室稼働率が低迷している。その対策として打ち出したプランと、セレブ気分を味わいたい層の需要がマッチしたといえる。

　一方、奈良市の日航ホテル奈良はテレワーク用の部屋を設けた。コーヒーメーカーや運動不足解消のためのエアロバイクも備える。

　テレワークを要請されているが、自宅では気が散って仕事ができないといった話をよく聞く。「人気作家が締め切り前にホテルに籠って執筆する」ようにホテル部屋は集中できる環境ではないだろうか。

　ホテル業界にとっては厳しい時期が続くとみられるが、長期滞在向けやテレワーク室など創意工夫で危機を乗り切ってほしい。(栄)