国原譜

同じ種類の仏像を横に並べて四方から眺め…

 同じ種類の仏像を横に並べて四方から眺めてみたら―。そんな独創的な入門書『対比でみる日本の仏像』(パイ インターナショナル)を奈良国立博物館名誉館員の鈴木喜博さんが出版した。

 十一面観音像であれば、顔と胴部のバランスや側面から眺めた体の厚み、背中の衣のひだなど、時代による作風の違いが見えてくる。

 これは平安仏、あちらは鎌倉仏と、見分けがつけば鑑賞の楽しみも増すのだが、決めてかかると肩透かしがあったりして、簡単にはいかない。

 仏像の美術書が難解と思われがちな一因を鈴木さんは、「解説した内容を示す写真や図解が一緒に掲載されていないことにある」と言う。高さをそろえて並べると、確かに分かりやすい。

 仏像の殿堂と呼ばれる奈良国立博物館をはじめ、県全体が殿堂と言ってよいほど県内には名の知られた仏像が多い。比べて歩くにはもってこいの環境だ。

 仏像は信仰の対象であり、美術品的な鑑賞には異論もあるだろうが、よく知ることは好きになること。日頃見慣れた仏像も、比較すれば新たな顔と出会えるかもしれない。(増)

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