国原譜

「ニコポン宰相」―。20世紀初め、3度…

 「ニコポン宰相」―。20世紀初め、3度にわたり首相を務めた桂太郎のあだ名だ。人を説得するとき、笑顔で背中を「ポン」と叩く癖が由来らしい。

 桂は日露戦争や韓国併合など歴史の節目で政権を担ったが知名度はいまひとつ。同じ長州(山口県)出身で明治の元勲、山県有朋の「傀儡(かいらい)」のイメージが強い。

 しかし、千葉功・学習院大教授の著書「桂太郎―外に帝国主義、内に立憲主義」(中公新書)では、政党政治初期の優れた調整型政治家と評価。「ニコポン」は桂の協調的な政治手法の象徴であり、通算在職日数2886日を誇った。

 安倍晋三首相の通算在職日数が20日、106年ぶりに桂を抜き史上1位となった。早くも安倍政権の歴史的評価が取り沙汰されるが、それは後世の歴史家の仕事だろう。

 しかし、研究の基礎となる資料が心配。官邸では官僚との議事録もなく、名簿も用が済めば遅滞なく破棄するらしい。

 おまけに閣僚や官僚も記憶をすぐに無くす。100年後、在職史上最長首相の歴史書が資料不足で薄っぺらいものにならないことを願いたい。(法)

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