市長や議員、職員らによるハラスメントの防止条例を再提出へ 奈良県生駒市、実態調査を経て条文見直し

前文に「互いに人格を尊重し合うことで、能力を十分に発揮できる環境を確立、ハラスメントの防止、根絶に努めることを決意」
奈良県生駒市は22日、市長や議員、職員らによるハラスメント行為を防止する条例案を市議会の9月定例会に再提出すると発表した。当初は今年3月定例会での可決を目指していたが、市議会から「制定に際して実態調査がなされていない」などの意見が出て継続審査となり、市が6月定例会で条例案を撤回。7月に職員約2400人を対象にアンケート調査を行い、条文の見直しを行うなど再提出の準備を進めていた。可決されれば10月1日に施行。制定は県内自治体では初となる。
同日の定例記者会見で、小紫雅史市長は「実態調査でハラスメントを訴える声がかなり寄せられた。実際にハラスメントかどうかは第三者委員会が認定するが、声が多かったことは重く受け止めたい。これを受け条例案はよりきめ細かく、修正を行った」と説明した。
新しい条例案には、これまでなかった「前文」を明記。「ハラスメントは個人としての尊厳や人格を不当に傷つける許されない行為」であり、「市長等、議員及び職員は、ハラスメントに関する知識を深め、身分、職位、および職責にかかわらず、互いに人格を尊重し合うことで、能力を十分に発揮できる環境を確立、ハラスメントの防止、根絶に努めることを決意(要旨)」するなど、理念・目的を明確にした。
対象を「職員」から、「市長等、議員及び職員」がそれぞれ尊厳を守られる立場とし、条文では、ハラスメントを受けた際の「相談窓口」について、心身の被害の回復に向けた支援を行うことを追加。ハラスメントの申し出があった際、市長は認定について調査し、解決に向け迅速かつ適切に対応する。
また、ハラスメント認定を行う「ハラスメント審査委員会」を「ハラスメント認定・対策委員会」と改め、認定業務に限らずハラスメントの防止などについても審議するとした。
今回は、議員に関するハラスメント相談等への対応も条文に盛り込まれた。具体的には、▷議長は議員からハラスメントに関する相談があれば、対応に必要な体制を整備する▷議長は議員からハラスメント認定の申し出があった場合速やかに調査し、解決に向けた対応を行う―など。
また、公正な調査により、ハラスメントの事実が確認された場合の措置として、市長等または議員による加害があった場合は公表される。職員については「地方公務員法第29条の規定による懲戒処分等」が科せられると明記。今回の見直しにより、条文は前回の14条から18条に変更となった。
小紫市長は「働く職員の尊厳を傷つけることがあってはならない。市は現在多様な採用を進めており、職員が市民のために気持ちよく健全に意見を戦わせながら、より良いまちづくりを進める職場環境をつくっていきたい」と述べた。