人材育成などソフト面で成長目指す「M.T.C」 - 奈良の自慢企業(22)
奈良県大和高田市大谷にある住宅地の細い路地を抜けていくと、家と家に挟まれた道路の先に「こんな所に製造業が~」と思わせる約1800坪もの広い敷地が突然現れる。金属プレス・板金加工を行うM.T.C(森久次社長)の本社兼板金工場だ。
同社は1968(昭和43)年7月に先代の森暁美氏が金属製プレス部品の製造を目的に個人創業した「森製作所」が前身となっている。前職での経験を生かして建築金物(ドアロック)の部品製造を主体に請け負っていたが、2004(平成16)年4月に法人化するとともに、すでに家業を手伝っていた森久次氏が代表取締役社長となった。
その後、徐々にドアロック部品の製造は低下していったが、代わって自動車部品や、スチールラック・スチールデスクなど鋼製家具の部品製造が主体となってきた。
まだまだ家族経営で小規模であった同社がターニングポイントを迎えたのが、葛城工業の代表取締役、吉岡社長(当時、専務)との出会いである。同い年の2人が、同じ取引先に出入りしていた縁もあって、葛城工業から金属部品製造の受注を受けることとなった。
安定した取引を続けていたが、ある時、吉岡社長から葛城工業で大きな設備投資をするので、発注先となるM.T.C(当時、森製作所)でも合わせて設備投資をしてくれないかと相談を受ける。大きな設備投資が売上増加につながらなければ、倒産するリスクをはらむことにもなる。当時、25歳の森社長は、吉岡社長の真面目な性格と仕事に対する強い熱意を直観で感じ取り、全面的な信用と信頼、同じくして母親からのアドバイスもあって、同じ船に乗る決断をした。
その決断が奏功し、今ではバス・トイレ・キッチンなど住設機器部品をメインに、鋼製家具部品、建設機械重機部品、自動車部品、健康回復医療機器部品など幅広い金属部品を製造している。
国や県の補助金、助成金をうまく活用して効率的に設備投資を行い、対応できる仕事の幅を広げることで事業を安定させてきたが、ハードの充実に合わせて、今後は人材育成をはじめ、ソフト面での更なる成長を目標としている。
そのため、地域社会や社員との関係強化を図って、これまでにも地域未来牽引企業や健康経営優良法人、事業継続力強化計画認定、パートナーシップ構築宣言、県社員・シャイン職場づくり推進企業など、数多くの取り組みを行ってきた。また業務の効率化に直結するDX戦略の推進にも注力している。そんな同社のこれからの発展を応援したい。
(帝国データバンク奈良支店長・近藤穣治)
【メモ】
M.T.C
大和高田市大谷8の1