レスリング・石田真子(いしだ まこ)選手 次こそは世界へ - 輝く奈良のアスリート
レスリングのJOC杯ジュニアクイーンズカップで2022年にU17の73キロ級、翌23年にはU20の76キロ級で準優勝しアジア選手権に2年連続で出場した石田真子(18)=桜井市=。次なる目標に向けて、奈良工業高等専門学校に通いながら競技を続ける。(有賀哲信)
ジュニアクイーンズカップで準優勝し、2年連続でアジアの舞台に立った石田。レスリングとの出会いは小学5年生の時のことだった。
幼稚園の頃に祖父、父、姉の影響で柔道を始め、小学生の中和大会で6連覇、県大会は5連覇という輝かしい戦績を残してきた。それがたまたまケーブルテレビで県内で活動するレスリングクラブの存在を知り、「面白そう」とすぐに見学に訪れた。たまたまその週にあった大会に勧められて出場してみると、柔道の技で相手を次々と投げ飛ばして優勝。柔道が生かせるのに加えて、足を持ってタックルができることに楽しさを感じ、すっかりレスリングのとりこになった。
中学はレスリング部のある大阪府内の強豪私立を選んだ。自宅のある桜井市を始発で出て、練習を終えて夜10時に帰宅する日々。中学初年度から全国大会に出場するも「2年までは8強止まり」(石田)と悔しい思いをしてきた。それが3年の2019年11月にあった全国選抜で3位に入賞した。本来ならそのまま上の高校に進むところだったが、石田はその選択をしなかった。
ある時テレビのCMで、世界には汚れた水を飲まざるを得ない地域がありそれで命を落とす子どもがいることを知った。そこで「汚染された水を飲料水に変える機械を作りたいと思った」と、機械工学が学べる奈良高専への進学を希望したという。「強豪校に進めばレスリングだけになってしまう。高専の勉強はかなり難しいが、夢のために両立させたい」。中学卒業の間際に見舞われたコロナ禍も自らと向き合う時間になった。
高専にはレスリング部がなかったため、県レスリング協会に所属し、県内の高校、大学に自ら連絡して練習に参加。2回のアジア大会で「身長、体格が違ってパワー負けしてしまった」経験から、時には男子大学生と練習してレベルアップを図ってきた。JOC杯で優勝すれば世界大会に出場できる。「次こそは世界へ」を目標に鍛錬を続けてきた。
そして、いよいよ今月13日から東京武道館で同大会が開かれる。しかし、石田はその出場を取りやめることにした。高専は4年からは専門科目になり、勉強がますますハードになってくる。アジア、世界大会へ出場すれば授業の出席に支障をきたすことが予想されたため断念したのだ。
「小さい時は練習嫌いで、アドバイスしても聞かない一徹なところがあった」とは、父親の剛都さん(48)による石田評だ。本人も「一人で黙々と集中してやるのが好き。部活に特化した強豪校は向いてなかったかも」と話す。実は高専では柔道部に所属し週に3日は柔道の練習も行っている。2022年の全国高専体育大会では優勝も手にした。その時々で自分がやるべきことを見据える。今は勉強に注力する時期なのだろう。
もちろんレスリング自体を断念したわけではない。今年は6月の全日本社会人選手権、10月の全日本女子オープン選手権、12月には天皇杯全日本選手権があり、それぞれに出場を目指していく。そして2025年春のJOC杯ジュニアクイーンズカップ。世界に羽ばたく日が来ることもそう遠くない。
いしだ・まこ
2005年6月1日生まれ。桜井市在住。奈良工業高等専門学校機械工学科在学中。家族の影響で幼少時から柔道を始め、小学生の中和大会6連覇、県大会5連覇を果たす。小学5年から始めたレスリングでは、19年に全国中学選抜選手権3位。22年から2年連続でジュニアクイーンズカップで2位に入りアジア選手権に出場。
2024年4月3日付・奈良新聞に掲載