志賀直哉旧居で呉谷さん講義 小説「暗夜行路」を解説
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奈良市高畑町の志賀直哉旧居(奈良学園セミナーハウス)で19日、本年度の第1回「志賀直哉旧居講座」が開かれた。建築史家で相愛大学名誉教授の呉谷充利さんが「志賀直哉『ナイルの水の一滴』―西洋的なもの、日本的なもの―」と題して講義した。
呉谷さんは志賀直哉が最晩年に「ナイルの水の一滴」として自身を語ったことについて解説。同時期に活躍した禅僧で仏教学者の鈴木大拙(だいせつ)の思想との類似性を指摘した。「大拙は宗教者、直哉は文学者として死生観を表現している」と話した。
また「西洋文明は知的な世界、日本的な東洋文明は情感の世界」と指摘。かつて直哉が旧居で書き上げた小説「暗夜行路」終章の「大山の一夜」は、「自然を加工せず大自然と一体となることで、人の生のはかなさとかけがえのなさを知った主人公を表現している自伝的な小説だ」と解説。参加者は熱心にメモを取りながら講座に聴き入っていた。
次回の同講座は、7月17日午後2時から「「魅惑の演劇、演劇の魅惑」で開講。講師は関西学院大教授の東浦弘樹さん。問い合わせは同旧居0742(26)6490。