警護検証や宗教と政治家など 政府、警察の対応注目 - 安倍氏銃撃あす1カ月
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奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の演説中に安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件から、あす8日で1カ月が経過する。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)=奈良市大宮町3=は、刑事責任能力を調べる精神鑑定を行うため、11月末ごろまでの予定で鑑定留置。その後、起訴となれば、山上容疑者の裁判の行方に国民の注目が集まる。一方、事件発生時の警護警備態勢の問題点が指摘される中、警察庁は検証チームを設置。5日の中間報告では、安倍氏の周囲にいた警護担当者4人が、一発目の銃声を「発砲音と認識していなかった」と明らかにした。
山上容疑者は犯行の動機について、母親が入信している宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に恨みがあり、「安倍氏が団体とつながっていると思ったから狙った」などと供述。「母親が入信して多額の寄付をし、家庭が崩壊した」とも話しており、最初は同教会の韓鶴子総裁を標的にしていたことも明らかになっている。
しかし、その後、コロナ禍の影響で韓総裁が来日しなくなったため、安倍氏に狙いを変更。事件前日の7月7日には、安倍氏が演説を行った岡山市の会場にも手製の銃を持参して向かったが、警備が厳重で「近づけなかった」という。
そして山上容疑者は翌日の7月8日、近鉄大和西大寺駅前で演説中の安倍氏の背後から近づき、約7メートルの場所で1発目を、さらに近づいて約5メートルの位置から2発目を発射。安倍元首相は血を流して倒れ、山上容疑者はその場で現行犯逮捕された。
同教会については、マスコミが連日、与党をはじめとする政治家との関与を報道。また霊感商法や信者への多額の献金要求問題など、同教会の「闇」が明るみになっている。
事件から約1カ月が経ち、山上容疑者の実家近くに住む70歳代の女性は「(山上容疑者の母親)とはお茶飲み友達として親しくしていた時期があった。宗教にのめり込み、家庭を顧みないひどい親といった報道をされているが、穏やかで上品で家庭を大切にしている人という印象が残っている」と回想。「身内の不幸などで精神が弱っている人の心につけ込んだ旧統一教会が許せないし、そこから救い出せなかった自分自身に後悔している」と話した。
山上容疑者の生い立ちや周囲を取り巻く環境、旧統一教会の実態など少しずつ明らかになってきた今回の事件。警護態勢の検証も8月末には最終結果が出る予定だが、再び同様の事件が起こらぬよう、警備の在り方や宗教の存在など、政府や警察が今後どう対応していくか注目したい。