金曜時評

「大河」主役に豊臣秀長 息の長い観光目指せ - 編集委員 辻 恵介

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 再来年2026年のNHK大河ドラマが「豊臣兄弟!」に決まった。主役が郡山城主、大納言秀長とあって、地元ならずとも関心が集まりつつある。

 

 その大河ドラマと奈良観光には深いつながりがある。1971(昭和46)年、柳生などが舞台の『春の坂道』(山岡荘八の小説が原作、のちに『柳生宗矩』に改題)が放映され、ご当地観光ブームの走りとなったことを思い出す。

 

 同年10月に発行された『昭和47年奈良県年鑑』(弊紙の前身「大和タイムス社」発行)の「奈良市」を見ると、【観光と行事】の項目には「(放映で)柳生が脚光をあび、新しい観光地として売り出した。だがこれは一種の流行…」と、冷静に分析されていた。

 

 このように、観光を一過性のもので終わらせるのではなく、継続的なもの、リピーターを増やすような視点を忘れてはならない。

 

 さらに広域連携の観点から、例えば今回は「城跡」というくくりで、県内の高取、宇陀松山、信貴山、多聞山、龍王山、片岡、椿井などの故地をマイクロバスなどで周遊し、戦国乱世を想像するといった企画も面白い。

 

 大和郡山市にとって今年は、市制70周年、柳沢吉里公の入部300年の記念の年。「吉報」を受けて早速、今春の異動で専門のスタッフ(3人)を組織し、受け入れの準備を始動させている。

 

 まずは、地元の歴史を学びつつドラマの舞台地となった“先輩”自治体に話を聴き、情報収集を図るのはどうか。幸い、お隣り和歌山県の九度山町は、2016年の「真田丸」の舞台になり、今なお人気の絶えない観光地。ノウハウを学ぶには好適地と思われる。

 

 大河ドラマに触発された観光客の中には、マイカー利用者も多いようだ。駐車場対策、予想される渋滞の回避策、観光地を結ぶバスやタクシーの確保、周遊のモデルコースの選定など課題は多い。

 

 さらに、地元住民の理解や協力が得られなければ、観光客に「おもてなし」の心は伝わらず、リピーター獲得など望むべくもない。また、オーバーツーリズム(観光客の急増による住民生活への悪影響)対策も必須だろう。

 

 九度山町の取り組みを分析した「地域は物語で『10倍』人が集まる―コンテンツツーリズム再発見」(2021年、生産性出版)という本には、「観光は行政や観光業者だけがやるものではなく、住民とのコンセンサスが重要となる」というくだりがあった。この姿勢を大事にしてほしい。

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