脚本家の山田太一さんが亡くなった。主に…
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脚本家の山田太一さんが亡くなった。主にテレビドラマの世界で活躍。「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎(りんご)たち」など、日本の放送史に残る名作で知られる。
大卒後に入社した松竹で、「二十四の瞳」などを撮った巨匠・木下恵介監督に師事。庶民の視点や反戦の思いを受け継ぎ、NHK「男たちの旅路」では、鶴田浩二さん演じる特攻隊の生き残りの警備員に反映された。
TBSでは昭和42(1967)年ごろから「木下恵介アワー」というドラマ枠があり、そこで腕を磨いた。その後「平凡な日常」がいかに大切なものか、そして壊れやすいものかは「岸辺―」でリアルに描かれた。
筆者は大学生の時、大阪・昭和町の小さな会議室で開かれた山田さんの講義を聞いた。その中で忘れられないのは「観察力」の話だった。
電車の中で、乗客の年齢、職業、家族構成、なぜこの電車に乗っているのか・どこへ向かうのか―などを想像することを勧められた。人間を描くためには、それだけの鍛錬が必要なのだと、感銘を受けた。
人間を、深く見つめ続けた89年の生涯だった。(恵)