山下知事「監視体制構築急ぐ」 一般車両通行再開の期日示さず 深層崩壊の恐れ、安全確保優先 村民らと意見交換会 - 奈良県下北山村国道169号崩土
奈良県山下真知事は11日、昨年12月23日に発生したのり面崩落死亡事故以来、国道169号の通行止めが続く下北山村を訪れ、村民代表らと意見交換を行った。制限のない一般車両の通行再開を望む住民に対し、県は「事故の再発を防止する監視体制の構築を急ぐ」と述べるにとどまり、一般車両が通行できる具体的な期日は示されなかった。
昨年12月23日、同村上池原の国道169号のり面が延長20メートルにわたって崩れ、通行していた車両2台が巻き込まれて男性1人が死亡した。現道は応急復旧後も通行止めが続くが、ダム湖に張り出すように建設した仮橋が今年4月に完成し、緊急車両と村民生活維持に必要な車両が通行許可を得て時間などの制限付きで通行している。雨量規制は通常基準の2分の1と厳しく、時間雨量12.5ミリ、連続雨量55ミリで完全通行止め。
現場は深層崩壊の恐れがあることが分かり、県は地すべりの予兆を今までの監視機器より高い精度で捉える監視体制を検討している。
意見交換会で、山下知事は「危険を事前に察知できるというある程度の確証を得られる体制を構築できれば(桟橋を利用して)一般車両の通行を再開できるだろう」としたが、期日は示さなかった。
意見交換会は国道169号沿線の上北山村と川上村もオンラインでつないで行われ、3村の首長や議会議員、村職員、区長、各種団体代表ら計約60人と県職員約20人が参加。
南正文・下北山村長は「国道169号は紀伊半島の物流を担う重要な道路であり、村民の生活道、救急、福祉の命の道です」とダメージを伝えた。村内の観光事業者も「通行再開の期日が分からず、同業者は光のないところで頑張っている。新しいトンネル建設までなら5、6年。持ちこたえられるはずがない」と訴えた。
また、キャンプ場やスポーツ施設などを運営する同村の財団は5カ月間で前年比3500万円の減収で「村の存続に関わる」と危機感を募らせた。
一方、山下知事は「再発すれば、犠牲になるのは3村の村民かもしれない。道路管理者として生命と身体の安全確保という責務がある」と現地の安全管理の必要性を強調。事業者のガソリン支援や3村宿泊等促進キャンペーンなどの支援パッケージを説明した。
山下知事は意見交換会に先立って事故現場を視察し、花を手向けた。記者会見で「車が焼けた跡が路面に黒く残っていて、生き埋めになり焼死された犠牲者の無念が伝わってきた」と心境を語り、「3村の皆さんの切実さは意見交換で改めて認識したが、道路管理者の責務と地域の生活正常化を両立させるために監視体制の構築をピッチを上げて検討する」と話した。