「学校は活性化の要」 奈良市立鼓阪小学校の統廃合で新団体発足
世界遺産・東大寺(奈良市雑司町)のお膝元、小学校の統廃合問題に揺れる「鼓阪地区」で、地域活性で子育て世帯を呼び込み、市が進める再編の動きをストップを目指して保護者や地域住民の運動「GOGO NEW TSUZAKA」が産声を上げた。学校の給食室を使って「地域食堂」を運営、商店街の空きスペースで高齢者世帯向けのお弁当販売。材料は近隣の地産地消の農産物で、空き家を拠点に子どもと高齢者の交流促進を打ち出すなど懸命に知恵を絞る。鼓阪小と、隣接する佐保小の再編は2026年度の予定。残された時間は限られているが、1日夜に行われた「集会」には市議会から各党の議員らが参加。住民の「生の声」に耳を傾けていた。
東大寺の旧境内に位置。大仏殿や正倉院正倉、転害門など「国宝」に囲まれ、希少な環境に歴史を刻んできた鼓阪小は創立150周年を迎えた。一方で、人口流入は限られ、周辺の私立小に子どもも分散するなど過小規模校化が進み現在の児童数は80人弱。市は「中学校区別実施計画」で佐保小との統合を決め、校舎建て替えも実質スタートしている。
危機感から地元では「鼓阪を守る会」が先行して結成され、5000人以上の署名も集まった。これに続く「TSUZAKA」は保護者と住民らが自然発生的に結集。もともと地域にあった地域活性化案をブラッシュアップした「地域活性化プラン」を掲げ、学校が拠点の活動で子育て世帯を呼び込み地域を再び活性化。それが銀行やスーパーを呼び込む起爆剤と訴える。
鼓阪小PTAの小川優子会長によれば、先月の保護者対象のアンケート調査では、「小学校を残したい」「活性化に小学校は必要」「学校の存続が子育て世帯の流入に強く影響する」との意見が出て、これを否定する回答はゼロだった。
地域活性化プランを情報共有するため1日開かれた集会では、呼びかけ人の関亜可里さんが、子どもの「居場所」づくりとして、小学校の空き校舎を活用した地域食堂や、地元商店街の一角での年配者ら対象のお弁当販売。地域の空き家を海外留学生らのホームステイに活用し、学校の英語教育などに協力してもらう。また小規模保育所やデイサービスなどと組み合わせをし、世代間交流を図る―など雇用も含めた案を説明。同じく川崎絵里奈さんも外国人家庭の子どもが転校してきたことで、子どもたちがインターネットを利用して自主的に言葉を勉強、交流を図るなど多様性を認め成長する様子なども紹介。
これに呼応するように参加者からは、天理市が打ち出した「地域連携型小規模校」の取り組みや、今回香芝市長選で学校の統廃合が焦点になるなど再編統合ありきではないこと、「観光地」でもある鼓阪ならではの活性化の期待、上級生が積極的・自発的に下級生の世話をする小規模校ならではの「子どもたち同士の密な関係」など発言。一方、「市は説明会を開いてもこちらの話は聞いてくれない」「本当に統廃合の流れを止められるのか」など不安も寄せられた。
集会には市議会から森田一成(自民党)、宮池明(公明党)、北村拓哉(共産党)、佐野和則(日本維新の会)、鍵田美智子(新世の会)、下村千恵(無所属)の6氏が出席。プラン実現には体制作りなど課題は多いが「熱量を肌で感じた」「市は何かにつけ『決定だ』という姿勢で住民の声を聞かない。議会でもできることをしたい」「運動が党派を超えて広がっている。活性化には地域の創意工夫が必要。行政が押し付けるものでない」「市の進め方がおかしい。地域の分断にならないよう、まとまった動きが必要」などの意見が聞かれた。